2026年2月13日、日本の文部科学省は教育課程部会情報・技術ワーキンググループ(第6回)を開催し、資料「AIに関する現状と検討課題について」を公表した。次期学習指導要領改訂を見据え、AI活用能力の育成とリスクの両面を整理した。
学校教育におけるAIの課題を公式整理
今回公表された資料は、学校教育においてAIを使いこなす力の育成が不可欠であるとの認識を明確に示したものである。生成AIの急速な普及を背景に、単なる利用の可否ではなく、教育課程の中でどのように位置づけるかが論点として整理された。
同時に、リスクにも具体的に踏み込んでいる。ディープフェイク(※)のような高度な偽画像・偽動画の拡散により、児童生徒が犯罪やトラブルに巻き込まれる可能性が高まっていると指摘。情報の真偽を見抜く力の重要性が一段と増している現状を反映した内容である。
さらに、生成AIに過度に依存することで自ら考える機会が減少する「認知的オフロード」や「認知負債(※)」の問題も挙げられた。思考過程を外部に委ね続ければ、基礎的な思考力の蓄積が弱まる恐れがあるとの懸念である。
加えて、思考を言語や図像として表現し可視化する「外化(※)」を伴わないAI活用の危うさにも言及した。外化を経ずに生成AIを利用すれば、深い理解や意味形成に結びつきにくいと整理している。
※ディープフェイク:AIで実在人物の顔や音声を高精度に合成し、本物のように見せかける技術。悪用されれば詐欺や名誉毀損につながる危険がある。
※認知負債:外部ツールに思考を依存し続けることで、本来自分で行う認知処理が蓄積されず、長期的に能力低下を招く状態。
※外化:自分の考えを言葉や図などで表現し可視化することで、理解を深める学習プロセス。
AI活用の恩恵と教育の分岐点
今回の整理は、AI活用を制限する方向性を示したものではない。むしろ、情報活用能力と言語能力を一体的に育成する必要性を明確化した点に意義がある。適切に設計すれば、生成AIは探究学習の高度化や個別最適化学習の推進に資する可能性が高い。
一方で、利便性が先行すれば、成果物だけが整い、思考過程が空洞化するリスクも否定できない。身体性に根差した理解や対話を通じた意味形成が軽視されれば、学力観そのものが変質する恐れがある。
今後の次期学習指導要領改訂では、AIを「使わせるか否か」ではなく、「どう使えば深い学びにつながるか」が焦点になると考えられる。設計次第で、AIは教育の質を高める加速装置にも思考力低下の引き金にもなり、日本の教育政策は適切な利用バランスを模索する分岐点に立っていると言える。
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