2026年2月9日、国内通信大手のソフトバンクは決算説明会で、宮川潤一社長がクラウド事業への本格参入を宣言した。2026年4月以降にAI向け計算基盤を外部提供し、日本発のクラウド事業者として存在感を示す方針である。
GPUクラウド「Infrinia」来期始動
説明会で宮川潤一社長は「これからクラウドサービスをやる会社になる」と述べ、同社が通信主体の企業からAIインフラ企業へ転換すると明確に打ち出した。2026年4月以降にクラウド事業を開始し、日本国内で本格的に計算資源を提供する計画だ。
中核技術は、GPU計算基盤をソフトウェア化する「Infrinia AI Cloud OS」である。従来のAI用途では、物理サーバーを占有するベアメタル方式が主流で、調達から利用開始まで数週間から数カ月を要していた。新基盤ではクラウドと同様に必要な分だけ即時利用でき、開発スピードを大幅に高められる。
同様の大規模GPUクラウドを持つのはMicrosoft、Google、AmazonなどのハイパースケーラーやCoreWeaveに限られるという。ソフトバンクは堺と苫小牧に建設中の「Brain Data Center」を活用し、学習だけでなく推論処理にも対応する商用クラウドとして外部提供を進める。
さらに全国分散型基盤「Regional Brain」や無線網とAIを統合する「AI-RAN」と接続し、国内でデータを保管・処理する体制を整備する構えだ。海外勢依存からの脱却を掲げ、将来的な海外展開にも意欲を示した。
国産クラウドの好機と重い投資負担
今回の同社クラウド事業への参入により、日本企業にとってGPU不足という慢性的な課題を和らげる可能性がある。国内に計算資源があれば、生成AIの開発や機密データの取り扱いが容易になり、いわゆるソブリンクラウド(※)需要の受け皿になり得るだろう。同社が強みとする通信網と一体運用できる点も低遅延やエッジ処理で優位に働く。
一方で、データセンター建設やGPU調達には巨額投資が不可欠で、需要変動次第では収益が不安定になりかねない。価格競争で外資大手と真正面からぶつかれば、採算確保は容易ではないことから、通信業者としてのノウハウを生かすスタイルで勝負する。
今後生成AI市場は拡大が続き、計算基盤は国家レベルの戦略資産になりつつある。
通信会社発のクラウドが成功すれば、国内IT産業の主導権を取り戻す転機になる可能性があると言える。
※ソブリンクラウド:データを国内の法制度下で保管・処理し、国外事業者への依存や情報流出リスクを抑えるクラウド形態。政府や金融機関を中心に需要が高まっている。
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