三島光産、AIで製造現場を再設計 ベトナムIT大手FPTと次世代基盤構築へ

2025年12月15日、工程請負大手の三島光産は、ベトナム最大級のIT企業FPTソフトウェアとAI活用による次世代製造基盤の共同開発で基本合意したと発表した。日本の製造業が直面する人手不足と技能継承の課題に、AI実装で挑む国内ニュースである。
三島光産、FPTとAI製造基盤で基本合意
鉄鋼系工程請負や連続鋳造用モールド・金型製造、総合エンジニアリングを手掛ける三島光産は11日、FPTソフトウェアとAI・クラウド・ロボティクス技術を活用した次世代製造基盤構築に向け、MOU(基本合意書)を締結した。
発表は15日で、日越企業による製造DX連携が正式に始動した形となる。
両社はAIとクラウドを中核とした製造プラットフォームの共同構築を目指す。制御システム開発や人材育成をデジタル基盤上で高度化し、現場運用の効率化と品質安定を同時に実現する構想だ。
三島光産はこれまでもFPTのAI技術と開発力を活用し、制御開発の仮想化・自動化を行う「MK Solution Cloud(※1)」や、AIによる現場教育支援「AI Mentor(※2)」を共同で進めてきた。今回の基本合意は、これらの取り組みを個別施策から製造基盤全体へと拡張する位置付けになる。
両社は、AIを単なる自動化手段ではなく、現場データを通じて学習し、AIが自立して学び成長する存在として設計するという。属人的な技能や判断を形式知化し、「AIが育つ製造現場」を実現する狙いだ。
※1 MK Solution Cloud:制御開発をクラウド上で仮想化・自動化する三島光産とFPTの共同基盤。
※2 AI Mentor:AIが作業手順や判断を学習し、現場教育を支援する仕組み。
製造AI実装の加速か 人材不足解消と新たなリスク
本合意のメリットは、日本の製造業が抱える人手不足と技能継承の課題に、AIを前提とした構造改革で対応できる点だろう。熟練者の知見をAIに蓄積できれば、教育期間の短縮や品質の平準化につながる可能性が高い。
一方で、AIに判断を委ねる領域が広がるほど、データ品質や運用設計の重要性は増す。学習データの偏りやブラックボックス化が進めば、現場の信頼を損なうリスクは残る。
それでも、海外IT企業との連携により開発力を補完し、AIを「育てる」思想を前面に出した点は注目に値する。
製造業におけるAI実装の現実解として、三島光産の今後の試みにも注目したい。











