日立ソリューションズ、建設業向けAIエージェント発表　技能継承を効率化

2025年12月3日、日立ソリューションズは建設業向けにAIエージェントを活用した新ソリューションを発表した。仕様書や作業手順を自動検索できる仕組みを提供し、国内の現場で技能継承と省力化を同時に実現する狙いだ。

AIで技術文書を即時検索、若手支援と省力化を同時に実現

今回提供される「建設業向けAIエージェント活用ソリューション」は、国土交通省や自治体の標準仕様書、自社の技術資料、業務ノウハウなどを生成AIで統合検索できる点が中核となる。
管理画面にドラッグアンドドロップするだけで文書が取り込まれ、現場技術者が必要な情報をチャット形式で取得できる仕組みである。

アップロードされた文書は暗号化され、自社専用のAI環境でのみ処理されるため、外部流出のリスクを抑えた設計となっている。標準仕様書の改定差分を自動比較する機能も備え、熟練者が担ってきた判断作業を効率化できるという。

このソリューションは北野建設との協創を通じて開発された。
現場ニーズを反映した検索機能を標準搭載しているため、技術者の作業負担を軽減し、若手の知識補完を支援する効果が見込まれている。

日立ソリューションズは今後、文書作成の自動化機能を追加し、業務プロセス全体の効率化を進める方針だ。

建設DXの加速要因に　技能継承と自動化の相乗効果と課題

今回の取り組みは、技能継承が滞りがちな建設業界において、知識アクセスを平準化するメリットがありそうだ。仕様書の即時提示により、経験差による判断のばらつきが抑えられ、品質の均一化が進むだろう。
また、文書作成の自動化が実現すれば、現場とオフィスをまたぐ業務負荷が減り、作業効率の底上げが見込める。

一方で、AIの利用が広がるほど、文書の更新頻度やデータ品質が不十分な場合に誤情報が共有されるリスクは高まる。システム運用には継続的なデータ整備と品質監査が不可欠であるため、中小企業にとっては投資負担が課題になるとも考えられる。

それでも、ナレッジ活用がAIによって標準化されれば、業界全体のDXが進み、属人性の高い業務構造が変わる可能性は大きい。

AIエージェント導入が「現場の判断力を補完する仕組み」として根付けば、建設業務は大きく効率化し、将来的には自動化領域がさらに広がると予測できる。

建設業向けのAIエージェントにより現場作業を効率化するソリューションを販売開始

関連記事：

日立、AI制御ロボ公開　製造現場の自動化に本格展開へ

あわせて読みたい

日立、AI制御ロボ公開　製造現場の自動化に本格展開へ 2025年11月20日、日立製作所は東京都内の研究開発拠点で、AIが人の頭部や腕を模したロボットを自律制御する技術を公開した。今後は製造業の顧客向けに展開し、人手不足...