生成AI相談窓口を文化庁が新設へ Sora 2急拡大で著作権侵害対策を強化

文化庁は動画生成AI「Sora 2」の普及を背景に、著作権侵害の懸念が高まっているとして、生成AI専門の相談窓口を今年度中に開設する方針を決めた。補正予算案への計上を経て、クリエーター支援体制を強化する。
文化庁、生成AIによる権利侵害相談へ専門窓口を新設
文化庁は28日に閣議決定された補正予算案に約2千万円を計上し、生成AIに特化した相談窓口を立ち上げる方針を示した。窓口は文化庁が運営する海賊版対策情報ポータルサイト内に設けられ、AIに詳しい弁護士が無料で対応する仕組みを整える。対象は権利侵害の疑いに悩むクリエーターや権利者である。
背景には、オープンAIが9月末に公開した動画生成AI「Sora 2」の急速な普及がある。同モデルは短い指示から高精度な動画を生成でき、アニメ特有の色彩や構図を再現する能力を持つ。これにより既存作品と酷似した動画が短時間で大量に作られる懸念が高まり、無断模倣の増加が避けられない状況となっている。
コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の推計では、2022年の日本のコンテンツ海賊版被害額は約2兆円にのぼっている。生成AIの浸透後は被害拡大のリスクがさらに強く指摘されており、文化庁は対策を急いでいる。
AI時代の著作権保護は深化へ 窓口強化の効果と残る課題
今回の窓口設置により、クリエーターが被害を受けた際の相談先が明確になる。特に生成AIは作品の盗用が短時間で拡散する傾向が強く、専門的な助言を即時に受けられる体制は、損害拡大の抑制に寄与すると考えられる。また、AI専門の弁護士が関与することで、従来の著作権相談では扱いきれなかった判断の難しいケースにも対応しやすくなるだろう。
一方で課題も存在する。Sora 2のように海外企業が提供するモデルの利用が中心となる中、日本国内の相談だけでは実効性に限界がある可能性がある。
また、生成AIが模倣したとされる表現が著作権法上の「侵害」に該当するかどうか、現行制度では判断が分かれることも少なくない。制度面のアップデートが遅れれば、相談窓口だけでは十分な抑止力を担えないとみられる。
今後は、国際的なルール整備や学習データの透明性向上が焦点になるだろう。生成AIが生み出す新たな創作機会の広がりと、既存クリエーターの権利保護の両立が求められ、政策側が速度感を持った対応を示せるかどうかが次の論点になると言える。
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