生成AI画像の無断複製で書類送検 著作物性判断がAI利用実務を左右へ

2025年11月20日、千葉県警は生成AIで制作されたデジタルアートを無断複製したとして、神奈川県大和市の無職の男(27)を著作権法違反容疑で書類送検したと発表した。AI創作物の扱いに新たな論点を投げかけている。
AI生成画像を著作物と認定し無断利用を立件
千葉県警生活経済課は、男が昨年8月25日、千葉県我孫子市の自営業の男性(27)が生成AIで作成しSNSに投稿したデジタルアートを電子書籍の表紙として利用し、販売サイトのサーバーに送信した行為を複製権侵害に当たると判断した。男は容疑を認めており、県警は「厳重処分」を求める意見を付けた。
捜査の端緒は、被害男性が同年10月末に「SNSに投稿したデジタルアート画像を何者かが無断で使用している」と県警に相談したことだった。調べによると、男は「私の本のタイトルや内容にフィットする格好いい素材だった」と動機を説明しているが、権利者への確認を行わずに利用した点が問題視された。
焦点となったのは、AI生成物が著作物として保護されるかどうかである。文化庁は、AIへの指示内容や試行回数、利用者の関与度を総合的に評価するとしており、今回は男性が多数のプロンプト生成と取捨選択を繰り返した点を重視。人の創作性が十分に認められるとして著作物性を肯定した。
こうした認定に基づき、警察がAI生成物の権利侵害として立件するのは国内でも注目すべき動きだと言える。
著作物性の線引きが鍵に 創作者保護と利用者負担の両面で変化
今回の事案は、AI生成物の扱いが実務レベルで変わりつつあることを示す象徴的なケースである。創作者がプロンプト設計や画像の選別などに大きく関与した場合、著作物として認定される可能性が高まり、権利侵害の立件も進む方向にある。この点はクリエイターにとって保護範囲の拡大につながる利点があると言える。
ただし、利用者側にはリスクの増大が避けられない。SNSや素材投稿プラットフォームに掲載された画像が、AI生成であっても著作物として保護される前提が強まれば、商用利用の場面で権利確認の負荷が増すと考えられる。特に電子書籍、広告、Web制作といった領域では、軽微な利用でも侵害と判断される可能性があり、実務的なガイドライン整備が急務になるだろう。
将来的には、生成AIの利用を前提とした著作物性の基準が、行政解釈や裁判例を通じてより明確化される見通しがある。その一方で、AIによる創作の裾野が広がるほど、権利処理の難易度が上がり、イノベーションの萎縮につながるおそれも指摘できる。創作保護と利用しやすさのバランスをどう取るかが、今後の制度設計の焦点になると見られる。
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