MIXIがASD・ADHDの人向けのAIロボを発売 社会人の特性理解を会話で支援

2025年6月19日、MIXIはAI会話ロボット「Romi」の新モデル「ライフスキルトレーニングモデル」を日本国内で発売した。
ASDやADHD当事者が、自身の特性を会話を通じて理解できるよう支援することを目的としており、冊子と連携した構成となっている。
会話で自己理解を促すAIロボ 社会人向けに新モデル登場
MIXIが新たに発表した「ライフスキルトレーニングモデル」は、発達障害の特性を持つ社会人や就職を控える若者を主な対象としたAIロボットだ。
同社の手のひらサイズの会話ロボット「Romi」をベースに開発されており、ASD(※1)やADHD(※2)の当事者が、自分の認知傾向や対人関係の特性を対話形式で学べるよう設計されている。
本モデルは、2024年10月に発表された視覚機能付きの「Lacatanモデル」ではなく、旧型の「P02」モデルをベースに構築されている。
開発には、発達障害のある人々の就労支援や自立支援を手がけるデコボコベースが協力。ASD・ADHDの特徴や社会生活におけるアドバイスを記した冊子も同梱されており、ユーザーは「Romi」に助言する形で、自らの行動特性を客観視することができるという。
価格は本体が7万1280円、加えて月額1628円または年額1万6280円の利用料が必要である。
MIXIは、本モデルの開発背景として、「発達障害と診断される人の増加」と「発達障害を持つ人々の職場定着の困難さ」を挙げている。
MIXIによれば、発達障害のある人の平均勤続年数は5年1カ月で、一般労働者(12.4年)の半分以下だという。また、離職理由の61%が「人間関係の不調」とのことだ。
コミュニケーションの難しさが、当事者にとって最大の壁となっている点に着目したようだ。
※1 ASD(自閉スペクトラム症):対人関係やコミュニケーション、興味・行動に偏りが見られる神経発達症の一種。
※2 ADHD(注意欠如・多動症):不注意・多動性・衝動性などの症状を特徴とする発達障害。
「発達障害支援×AI」 社会実装への課題と可能性
本モデルの登場は、AIが発達障害支援の領域に本格参入する契機になると捉えられる。
今後、視覚認識や感情解析などが組み込まれた次世代機種への移行が進めば、より実践的な「模擬対人訓練」が可能になるだろう。
また、企業や自治体との連携により、就労支援施設や福祉サービスとの連動運用も拡大していく可能性がある。
加えて、教育分野への展開も視野に入るだろう。現在は社会人・就職直前層が対象だが、学習塾や学校との協働モデルが生まれる可能性がある。
一方で、AIに対する依存の問題や、「機械による支援」が人間関係の代替となる危うさについては懸念がある。補助的ツールとしての位置づけを明確にし、専門職や対人支援との連携体制を構築することが、技術活用の成否を左右するだろう。
総じて、本製品は発達障害をめぐる社会的支援の新たな道を示しているが、それを社会実装するための制度設計と倫理的整備が、今後は重要になると考えられる。