中南米12カ国が独自AI「Latam-GPT」開発へ 先住民言語や文化の保全目指す大規模連携

2025年6月17日、チリ政府は中南米12カ国が協力して開発する地域初の大規模AI言語モデル「Latam-GPT」を9月に公開予定であると発表した。
現地文化や先住民言語に特化したモデルの誕生は、グローバルAIに対抗し得る地域主導の動きとして注目できる。
中南米12カ国が連携、文化反映のAIモデル誕生へ
中南米地域におけるAI技術の自主的発展を目的としたプロジェクト「Latam-GPT」が、2025年9月に公開される見通しとなった。
発表したのはチリの国立人工知能センター(CENIA)であり、同国の科学相アウィン・エチェベリ氏が概要を明かした。
このプロジェクトには、チリ、アルゼンチン、ペルー、メキシコ、ブラジルなど計12カ国が参加しており、30を超える地域研究機関や大学が共同で開発を進めている。
最大の特徴は、現地の文化的背景や多言語性を理解・再現する訓練が施されている点である。
たとえば、イースター島のラパ・ヌイ語については、すでに初期の翻訳機能が実装されており、今後も現地の文化や言語を反映したモデルとなることが想定されている。
また、「Latam-GPT」は、チャットボットや教育、医療分野での実装が想定されており、米OpenAIのChatGPTのような商用プロダクトと競合するものではないという。
あくまで地域住民のための「公共的AI基盤」として、技術の民主化を後押しする狙いがある。
AIの「民主化」加速か 文化的自立の象徴にも
Latam-GPTが描く未来は、単なるAI開発にとどまらない。
地域特化型AIとして設計されたこのモデルは、中南米諸国がテクノロジーの受け手から発信者へと転じる、象徴的プロジェクトだと捉えられる。
特に教育や医療分野では、文化的背景や言語的ニュアンスに即したAI活用が求められている。スペイン語とポルトガル語を話す大多数に加え、多数の先住民言語を持つ中南米では、汎用的なグローバルAIでは対応しきれない現実がある。
Latam-GPTがそうしたギャップを埋める手段となる可能性は高いだろう。
一方で、地域のITインフラ整備やAI開発人材の確保など、プロジェクトの継続性には課題も残る。加えて、倫理的観点やデータの偏りといった問題が、グローバルAIと同様に問われることになるだろう。
とはいえ、オープンソースで展開されるこの試みは、中南米におけるAIの裾野を拡げる強力な推進力になると考えられる。
現地主体でのAI構築は、今後のグローバルなAI競争の中で、「文化的多様性」という価値を押し広げる契機となり得る。