巨大ITの生成AI組み込み、競合排除なら独禁法違反の可能性 公取委が報告書で警鐘

2025年6月6日、公正取引委員会が生成AI市場の実態調査報告書を公表した。
報告書では、現在、米グーグルやマイクロソフトなど巨大IT企業による生成AIの搭載が主流となっているが、これが競合排除を目的とする場合、独占禁止法違反に該当する恐れがあるとの指摘があった。
生成AIの「抱き合わせ」提供に法的リスク
公正取引委員会が6日に発表した報告書では、生成AIの市場動向と競争環境に関する分析が行われた。その中で焦点となったのが、巨大IT企業による既存サービスと生成AIの一体提供である。
グーグルは検索エンジンに生成AIを搭載して要約機能を導入し、マイクロソフトは「Word」などのオフィス製品に生成AIを統合している。
これらが自社製AI以外の選択肢を排除することを目的に展開されている場合、公正な競争を阻害する「抱き合わせ販売」や「私的独占」に該当する可能性があると、公取委は警鐘を鳴らした。
報告書では、生成AIの導入自体は独禁法違反には直結しないとしつつも、それが競合他社の市場参入を妨げる意図を持つ場合には法的問題が生じると強調されたようだ。
生成AI時代の競争政策、透明性と多様性が鍵に
今回の指摘は、生成AIが普及する中で、新たな競争政策が求められる時代に突入したことを示している。サービスとAIを一体で提供するモデルは、ユーザーに利便性をもたらす反面、他社製AIの選択肢を実質的に封じる構造にもなり得る。
生成AIは進化の速度が速く、開発には膨大なデータと計算資源が必要だ。
結果として、資金力に勝る巨大IT企業が優位に立ちやすく、スタートアップや中小企業の参入障壁が高まる傾向にあるのだと考えられる。
今後、企業には、「AI機能提供における透明性を向上させること」や「ユーザーに選択肢を残す設計」が求められるだろう。
また、規制当局側も引き続き市場監視を強化し、不公正な排他行為に対しては迅速に対応する必要がある。
生成AIの活用が広がるほど、公正な競争環境の整備は社会全体の課題になると思われる。
今後は、利便性と競争原理のバランスをいかに保つかが、政策の成否を左右することになるだろう。