トレジャーデータ、AIエージェント搭載の次世代MA「Engage Studio」正式提供 顧客理解から施策実行まで一気通貫へ

2025年6月5日、CDP(顧客データ基盤)大手のトレジャーデータが、AIエージェントを搭載した次世代型マーケティングオートメーション(MA)製品「Engage Studio」の正式提供を発表した。国内企業への先行提供では工数削減効果も確認されており、今後のMA市場に大きな変化をもたらす可能性がある。
トレジャーデータ、CDP×AIのMA製品で正式参入
トレジャーデータは、AIエージェントを活用したMA製品「Engage Studio」の正式提供を開始したと明らかにした。同社はこれまでCDP領域を主軸に事業を展開してきたが、今回の製品でMA市場に本格参入する。
Engage Studioは「AIファースト」の思想で設計されており、CDPとAIが一体となって顧客理解から施策実行、結果の改善までを一気通貫で実現する点が特徴だ。最大80%の業務工数削減を可能にし、リアルタイムで最適なコミュニケーションが取れるよう設計されている。
CDPとシームレスに統合されており、各種顧客データを施策の配信まで直結できることから、ROI(※)を短期間で最大化する運用が可能となる。既に4月から一部国内企業に先行提供されており、メール作成業務の工数が66%削減されたという成果も得られている。
同社は本格提供を皮切りに、3年以内にMA市場でのトップシェア獲得を目標に掲げている。
※ROI(Return on Investment):投資対効果。投入した資本に対してどれだけの利益が得られたかを示す指標。
従来型MAからの脱却へ AI活用が新たな常識に
Engage Studioの提供開始は、AIを前提としたMAの新たな常識を築く可能性を示している。従来のMA製品の多くは1990年代から2000年代初頭に設計されたもので、AIを活用した業務設計には適していないという構造的な課題を抱えていた。
トレジャーデータは、10年以上にわたって「Treasure Data CDP」の開発を通じて顧客データの活用基盤を提供してきた。そして2024年からは「顧客データから顧客AIへ」という進化方針を掲げ、データドリブンな意思決定からAIによる自動最適化への転換を加速させている。
AIエージェントの導入により、担当者の手間を減らしながらも、顧客一人ひとりに対して最適なタイミング・内容でのアプローチが可能となる。これにより、成果を出すまでのスピードと正確性が大幅に向上する点は、特に人手不足やデジタル変革が課題となっている企業にとって大きな魅力である。
今後は他のCDP事業者やMAベンダーも、AI機能の実装を進める動きが加速するとみられる。トレジャーデータが打ち出した「AIファースト型MA」の潮流が、業界全体の標準となる日は近いかもしれない。