2026年10月8日、国内の日立ソリューションズは、サブスクリプションビジネス向け基盤「BSSsymphony サブスクリプションプラットフォームサービス」の最新版を提供開始した。MCP対応によってAIエージェントと業務データの連携を可能にするとともに、自然言語で情報を検索できる対話型AI機能を追加し、業務自動化と顧客対応の効率化を支援する。
MCP対応でAIエージェントと顧客・契約データを連携
今回の最新版では、AIエージェントが顧客情報や契約情報などの業務データにアクセスできる仕組みを導入した。MCP(※)に対応することで、企業が利用する多様なAIエージェントや大規模言語モデル(LLM)と、標準的な方式でデータを連携できるようになる。利用するAIを柔軟に選択できるほか、業務データを取得するためのMCPツールも容易に追加でき、さまざまな業務システムとの連携拡大にも対応する。
さらに、新たな「対話型AI業務支援ライセンス」を提供する。業務運用担当者は自然言語で質問するだけで、顧客情報や契約情報、請求情報などから必要なデータを取得できる。従来は複数の画面を横断して確認する必要があった情報も、対話を通じて迅速に把握できるため、顧客からの問い合わせや契約内容の確認にかかる作業負担の軽減が期待される。
背景には、企業内の業務データが個別のシステムに分散しているという課題がある。サブスクリプションビジネスでは、顧客ごとに契約内容やサービスの利用状況、請求状況が異なるため、個別の事情を踏まえた正確な対応が欠かせない。従来のAIによる顧客対応はFAQやマニュアルなどの定型情報を基にした回答が中心だったが、今回の機能拡充によって、実際の業務データを参照するAI活用へと幅を広げる。
同社は2020年から、サブスクビジネスにおける顧客・契約・課金管理や決済をワンストップで支援する同サービスを提供してきた。製造業や通信業などでの導入実績を基盤に、AIを活用した業務支援を強化する構えだ。
※MCP(Model Context Protocol):AIモデルと外部のデータやシステムを接続するためのオープンプロトコル。異なるAIと業務システムの連携を標準化する役割を担う。
業務自動化の拡大に期待 データ管理とAI運用の設計が課題に
今回の機能拡充の意義は、AIを一般的な質問への回答にとどめず、企業固有の業務データを活用する仕組みへと発展させた点にある。AIエージェントが必要な情報を取得できれば、担当者による検索や照合作業を減らし、顧客対応の迅速化につなげられる可能性がある。さらに、MCPを通じて複数の業務システムとの連携が進めば、情報収集だけでなく、業務プロセス全体の効率化や自動化を検討しやすくなるだろう。
また、利用するAIエージェントやLLMを柔軟に選択できることは、企業が既存のAI環境を生かしながら導入を進めるうえで利点となる。特定のAIだけに依存しない連携基盤を整備できれば、今後のAI技術の進化や業務ニーズの変化にも対応しやすい。MCPツールを追加できる設計も、対象となる業務システムを段階的に広げるうえで有効と考えられる。
一方、業務データをAIに接続する際には、情報へのアクセス権限や個人情報の取り扱い、回答内容の正確性を適切に管理する必要がある。顧客ごとの契約や請求に関する情報を誤って参照したり、不正確な回答を顧客に提示したりすれば、業務上のトラブルにつながりかねない。MCPへの対応そのものが、こうしたリスクを自動的に解消するわけではなく、企業側にも運用ルールや検証体制の整備が求められる。
日立ソリューションズは、今回の基盤提供を皮切りにAI機能の開発を加速する方針だ。今後は、業務データとの連携範囲やAI活用の具体的な成果が、導入企業の拡大を左右する要素となる。