2026年投入の「Instinct MI400」、性能が倍に AMDが新GPUとROCm 7を発表

2025年6月12日、米AMDはサンノゼで開催された「Advancing AI 2025」にて、2026年に投入予定の次世代AI向けGPU「Instinct MI400」とAI開発環境「ROCm 7」を発表した。
性能向上と開発効率の飛躍的改善が期待できそうだ。
2026年投入「Instinct MI400」は性能2倍、ROCm 7も登場
発表された「Instinct MI400」は、現行のMI350シリーズの後継機にあたり、FP4(※)スループットが20PFLOPSから40PFLOPSへと倍増する点が最大の特徴だ。
432GBのHBM4メモリ搭載により、パッケージのメモリ帯域幅は19.6TB/sに達し、処理性能とデータ転送効率を大幅に強化する設計となっている。
また、スケールアップ性能向上を目的に、新インターコネクト技術「UALink」に対応し、Infinity Fabricの制限を超えて最大8基以上のGPU接続が可能になる。
これにより、260TB/sの帯域幅を持つ大規模AI処理環境を構築できる見通しだ。
このMI400シリーズを搭載したAI用ラックサーバー「Helios」も併せて開発が進められており、1ラックで最大72GPUをスケールアップできる構成となる。
同時にAMDは、AI開発向けのソフトウェアスタック「ROCm 7」も発表した。
ROCmはMI350シリーズをサポートし、推論性能は従来比で3.5倍、学習性能は3倍に向上している。
さらに、企業向けの「ROCm for Enterprise AI」やクラウドでAI開発を支援する「AMD Developer Cloud」も展開し、開発から実運用までを包括的にサポートする。
※FP4:AI処理向けに特化した低精度の演算形式。Sparse(スパース性)を活用することで、実行効率を大幅に高める手法。
性能倍増と開発環境強化がもたらすAI産業の加速と課題
Instinct MI400シリーズの性能倍化は、AIの大規模処理能力を飛躍的に引き上げる可能性を秘めている。特に、FP4精度のスパース処理性能強化により、最新AIモデルの高速推論や大規模学習が効率化されるため、産業用途での活用範囲が広がるだろう。
また、ROCm 7の性能向上とエンタープライズ対応により、AI開発の効率化と品質向上が期待できる。クラウド上のマネージド開発環境も充実しているため、開発リソースの初期投資を抑えつつも、高度なAIソリューションを迅速に展開できる体制を整えられそうだ。
一方で、GPUの高性能化に伴い、消費電力や発熱量の増加、また巨大なインフラ投資が必要になる課題も無視できない。大規模GPUクラスタ運用のコスト増加や、対応ソフトウェアの成熟度向上が求められる場面もあるだろう。
それでも、今回の発表はAI開発における選択肢の多様化を後押しする点で意味が大きい。今後は、AMDのGPU性能向上とソフトウェア環境の強化が、AI市場競争を激化させるとともに、性能とコストのバランスをどう取るかが業界の焦点となるだろう。