日立製作所と日立エナジーは、エネルギーインフラの運用高度化に向けたAIサービス群「HMAX Energy」を発表した。
設備の寿命延長と運用最適化を軸に、電力会社や再生可能エネルギー、産業、データセンターなど幅広い領域に展開する。
AIサービス群「HMAX Energy」提供開始
2026年3月23日、日立製作所と日立エナジーは、エネルギーインフラ全体を対象としたAIサービス・ソリューション群「HMAX Energy」を提供開始した。
電力会社や再生可能エネルギー、データセンターなどのバリューチェーン全体に対応し、設備の運用効率向上と系統信頼性の強化を狙う。
背景には、電力需要の急増と送配電網の老朽化がある。
多くの国では送配電設備の大部分が想定寿命を超過しており、加えてサプライチェーンの逼迫も続くなか、既存設備の稼働率向上と寿命延長の重要性が高まっている。
HMAX Energyは「Plan(計画)」「Predict(予測)」「Prevent(予防)」の3軸で構成される。
AIを活用して設備や環境データを分析し、異常の兆候を早期に捉えることで、根拠に基づく保全計画や予防保全を支援する仕組みである。
実証では、変圧器故障による収益損失を最大60%削減できることが示されているほか、故障発生率の低減や修理コストの削減にも寄与する。
さらに、高圧直流送電(HVDC)向けデジタルツインの活用により、インシデント対応時間を大幅に短縮する事例も報告されている。
電力インフラ高度化の加速と課題
本件のメリットは、設備保全を「事後対応」から「予測対応」へと転換できる点だろう。
老朽化や人材不足が進む中でも既存資産の寿命を延ばし、安定運用を維持できる可能性が高まる。
特に送配電設備では停止リスクの低減が収益と社会的信頼の双方に寄与するとみられる。
再エネ拡大による需給変動への対応力も高まり、運用最適化の価値は一段と重要になるだろう。
一方で、導入効果はデータ基盤の成熟度に大きく左右される。
設備ごとの仕様差や老朽機器のデータ不足が障壁となり、期待した精度に達しないケースも想定できる。
さらに、AIの判断を現場でどこまで受け入れるかという運用設計も課題になり得る。
人手不足の補完として期待される半面、AIを扱う専門人材の確保が新たな負担になる可能性も否定できない。
今後は、AIが単なる保全支援を超え、送配電網全体の運用基盤へと発展していく展開が想定できる。
異常検知にとどまらず、需要予測や再エネ出力の変動対応を統合することで、運用の高度化が進む可能性がある。
さらにデジタルツインや遠隔監視との連携が進めば、現場対応の迅速化と意思決定の精度は一層向上していくと考えられる。
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