日本電気株式会社(NEC)は、119番通報の通話内容から傷病者の症状や状況を抽出し、緊急度判定の入力を支援する生成AIシステムのプロトタイプを開発したと発表した。
横浜市消防局と検証を行った結果、人間が入力した判定結果と比較して約85%の正答率を確認したという。
通報件数が増加するなか、指令業務の効率化に向けた技術として注目できる。
生成AIで119番通報の判定入力を自動支援
2026年3月12日、NECは、119番通報の通話内容を解析し、傷病者の症状や状態を自動抽出する生成AIを活用した緊急度判定入力支援システムのプロトタイプを開発したと発表した。
横浜市消防局の協力のもと検証を実施し、人間が入力した結果と比較して約85%の正答率を確認したという。
今回のシステムでは、通話音声を音声認識でテキスト化し、生成AIなどを活用して傷病者の状態や症状に関する情報を抽出する。
抽出されたデータをもとに、緊急度判定画面の該当項目を自動選択し、プロトコル(※)に基づいた判定結果を表示する仕組みである。
近年、日本では高齢化や酷暑などを背景に119番通報が増加している。
消防庁の「令和7年版消防白書」によれば、2024年の119番通報件数は全国で約1,014万件に達し、過去最多だった2023年の約1,025万件に迫る水準となった。
通報集中時には指令員につながらない「滞留呼」が発生する可能性があり、受付業務の効率化が課題とされている。
NECは今後、横浜市消防局とフィールド実証を進め、2026年度中の実用化と導入を目指す方針だ。
総務省が公開している全国向けの緊急度判定プロトコルにも対応し、全国の消防本部へ提供する構想も示している。
※プロトコル:業務や判断を一定の基準と手順に沿って進めるためのルール。今回の文脈では、119番通報時に傷病者の緊急度を評価し、必要な対応や聞き取り内容を標準化するための指針を指す。
119番通報に生成AI導入の可能性と課題
今回の取り組みは、119番通報の受付業務における入力負担を軽減し、指令員が状況判断や通報者への聞き取りに集中しやすくなる点で意義があるだろう。
通話内容から症状や状況を整理し入力を支援できれば、初動対応の迅速化につながる可能性もある。通報件数が増加するなか、人員の制約を補う技術として一定の効果が期待できる。
一方で、公共安全の現場で求められる精度の水準を考えると、約85%の正答率が十分かどうかは慎重に見極める必要もあるだろう。
残る誤判定の中に重大案件の見落としが含まれる可能性も否定できない。
119番通報は短時間で命に関わる判断を迫られるため、一般的な業務支援システム以上に高い信頼性が求められるとみられる。
今後は、横浜市消防局での実証を通じて実運用への適合性が検証されていくと考えられる。
評価の焦点は正答率だけでなく、重症案件の見逃し率や処理時間の短縮、指令員の負担軽減といった実務指標に置かれる可能性が高い。
これらの成果が確認されれば、将来的には他の消防本部への導入や全国的な展開につながる可能性もありそうだ。
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