株式会社日立製作所は、暗号資産やステーブルコイン、NFTなどのデジタルアセット取引におけるアンチ・マネー・ローンダリング(AML)高度化の取り組みが、金融庁の「FinTech実証実験ハブ」の支援案件に採択されたと発表した。
複数の暗号資産事業者が連携し、不正ウォレット情報を共有する業界横断のAML対策の実証を進める。
日立のAML高度化実証、金融庁支援へ
2026年3月10日、日立製作所は、暗号資産やステーブルコイン、NFTなどのデジタルアセット取引におけるアンチ・マネー・ローンダリング(AML)高度化の取り組みが、金融庁の「FinTech実証実験ハブ」の支援案件に採択されたと発表した。
背景には、暗号資産を悪用した詐欺、資金洗浄などによる不正流出などの問題が拡大していることがある。
日立はすでに2025年2月から4月にかけて、デジタルアセット取引のAML実証実験を関連事業者と共同で実施している。
今回の選定では、取引時点でのリスク評価や、ブロックチェーン上での不正兆候を早期に把握する仕組みを民間主体で構築しようとする点が評価された。
今回選定された取り組みは、複数の暗号資産交換業者やステーブルコイン関連事業者などが連携し、不正の疑いがあるウォレットアドレス情報を業界横断で共有する仕組みを検証するものだ。
今後の実証では、取引リスクの確認やモニタリング技術を活用し、詐欺やマネーロンダリングの早期検知と被害拡大の防止を目指す。
さらに、分析結果の共有方法や情報の取り扱い範囲、個人情報保護への配慮など、実務上の論点も整理される予定である。
業界横断AMLの可能性と課題
今回の取り組みの利点は、デジタルアセット市場におけるAML対策を「個社対応」から「業界連携」へと進める可能性を示した点にある。
ウォレットアドレスの不正情報を複数の事業者が共有できれば、詐欺資金の移動や不正送金の早期検知につながると考えられる。
結果として、ユーザー保護や市場の信頼性向上にも寄与する可能性がある。
一方で、業界横断の情報共有には慎重な制度設計が求められる。
ウォレット情報の扱い方によっては、個人情報保護やプライバシーとの関係が問題になる可能性があるほか、事業者間でのデータ管理責任の所在をどのように整理するかも重要な論点になる見込みだ。
さらに、AML対策は国際的な規制動向とも密接に関係する分野だとみられる。
暗号資産取引は国境を越えて行われるため、日本国内の仕組みだけでは対応が難しいケースも発生するだろう。
デジタルアセット市場が拡大するなかで、信頼性を担保する仕組みの整備は不可欠だろう。
今回の実証が実務レベルで有効性を示せば、国内の暗号資産事業者におけるAML体制の標準モデルとして参照される展開も考えられる。
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