インフカム、日本海洋レジャー安全・振興協会、KDDIは、衛星通信サービス「au Starlink Direct」を活用し、海上の通信圏外エリアから救難要請を発信できる実証を実施すると発表した。
スマートフォンから海難事故を通報できる仕組みの構築を目指す。
スターリンクで海上SOS通報を実証
2026年3月10日、インフカム株式会社、日本海洋レジャー安全・振興協会、KDDI株式会社の3社は、衛星通信を利用した海上緊急通報の実証実験を行うことで合意した。
スマートフォン向けアプリ「マリンコンパス」と、海上救助ネットワーク「BAN(Boat Assistance Network)」を連携させ、通信圏外海域でも救難要請を送信できる仕組みを検証する。
今回の実証では、KDDIが提供する「au Starlink Direct」(※)のデータ通信を活用する。
海上で事故が発生した場合、利用者はマリンコンパスのアプリから位置情報付きの通報を送信する。
通報はBANのROC(Rescue Operation Center)で受信され、海上保安庁へ「認知海難」として通報される仕組みである。
背景には、小型船舶事故の多さがある。
内閣府の交通安全白書によれば、2024年の船舶事故は1,817件発生し、そのうち約76%をプレジャーボートや漁船などの小型船舶が占めた。
さらに事故の95%以上が海岸線から24海里(約44km)以内で発生しており、この範囲には携帯通信が届かない海域も少なくない。
マリンコンパスは、船舶の出港・帰港や現在位置を家族や仲間と共有できるアプリである。
これまでは4G/5G通信が届く海域に限定されていたが、衛星通信への対応により、通信圏外だった海域でも位置共有や緊急通報が可能になる見込みだ。
3社は2026年4月に実証を行い、海洋レジャーが活発になる5月頃に衛星通信対応機能の提供を開始する予定である。
※au Starlink Direct:スマートフォンが衛星と直接つながり、携帯圏外でも通信できるKDDIのサービス。
スマートフォン×衛星通信、海難対策の新基盤へ
スマートフォンと衛星通信を組み合わせた救難通報の仕組みは、海上での通信インフラ不足を補う手段として注目される可能性がある。
これまで小型船舶では無線機や衛星電話を備えていないケースも多く、事故発生時の連絡手段が限られていた。
一般的なスマートフォンから救難要請を発信できる環境が整えば、海難事故の早期把握や救助の迅速化につながる展開に期待できる。
一方で、衛星通信は気象条件や端末の対応状況などに影響を受ける可能性があり、海上では安定した通信品質を確保することが課題となる場面も想定される。
また、サービス利用料や対応機種の普及状況によっては、実際の利用拡大が段階的に進む可能性も考えられる。
それでも、スマートフォンと衛星通信を組み合わせたSOS通信は、海上安全の在り方を変える潜在力を持つ技術といえる。
今後は登山や離島、山間部など通信圏外地域への応用も視野に入り、日本の災害・安全対策を支える新たな通信基盤へ発展していくだろう。
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