AI普及で電力需要増に対応 東電社長、原発再稼働と送電網へ集中投資

2026年1月6日、東京電力ホールディングスの小早川智明社長は、メディアの取材に対し、AI普及に伴う電力需要の増加を背景に、原発の再稼働に加え、再生可能エネルギーや送電網の整備に投資する考えを示した。
発言は、電力の安定供給を確保する観点からのものだ。
需要増を想定し、原発・再エネ・送電網へ投資方針
小早川社長は、AIの普及などを背景に電力需要が増えるとの見通しを示したことが、6日に福島民友新聞社より報じられた。
安定供給を維持するため、原子力発電の再稼働や再生可能エネルギー、送電網の増強に重点的に投資する必要があるとの見方を示した。
こうした投資方針の背景には、福島第1原発の廃炉費用が総額約8兆円に上るという現実がある。
社長は「福島への責任を果たすには廃炉現場だけでなく、経済活動の基盤を整えなければならない」と述べ、集中的な投資により廃炉費用の安定確保を図る考えを示したという。
東電は近く政府に新たな経営再建計画を提出する予定で、DXやGX(※1)の進展を背景にエネルギー需要が増えるとの見通しも示した。
具体的な投資額には触れなかった一方、安定供給に向けて供給力を整える重要性を述べ、相応の投資が必要との認識を示した。
経営再建に向けて、東電は、柏崎刈羽原子力発電所6号機の再稼働を20日に予定している。
ただし小早川社長は、原発事故の当事者である立場を踏まえ、地元から直ちに信頼を得られる状況ではないと認めた。
安全運転と福島第1原発の着実な廃炉を同時に進めることで、信頼回復を図る考えである。
一方、廃炉作業では燃料デブリ(※2)の取り出し開始が遅れる見通しとなり、2051年完了目標の達成には不確実性も残るが、社長は目標を堅持する姿勢を示した。
※1 GX:グリーントランスフォーメーション。脱炭素(カーボンニュートラル)を軸に、エネルギー供給や産業構造を転換する取り組み。
※2 燃料デブリ:原子炉事故で溶融した核燃料が周辺の構造物などと混ざり、冷えて固まった物質。
AI時代の電力戦略、成否を分ける柔軟性
本件の最大のメリットは、AIの普及による電力需要増を一過性の現象ではなく、前提条件として捉えた点にあるだろう。
原子力、再生可能エネルギー、送電網を並列に位置付けることで、特定電源への依存を避けつつ、供給安定性を高めようとする姿勢がうかがえる。
とりわけ送電網強化は、再エネ導入拡大やデータセンター需要の受け皿として、中長期的な産業基盤を支える役割を果たす可能性がある。
しかし、原発再稼働を供給力確保の柱に据える構図には、社会的な摩擦が残るとみられる。
事故当事者としての信頼回復が十分でない中、再稼働を急ぐ印象が強まれば、地元理解を損なうリスクは避けられないと考えられる。
また、AI需要を前提とした巨額投資は、需要予測が外れた場合の経営リスクを内包しており、慎重な見極めが求められるだろう。
今後、AI時代の電力需要増は、政策立案や投資判断の前提条件として織り込まれていく可能性が高い。
一方で、その立ち上がりの速さや規模を正確に見通すことは容易ではなく、不確実性を伴う状況が続くと考えられる。
原発を短期的な供給力対策と位置付けつつ、送電網整備や分散型電源の活用によって需要変動に耐え得る構造を築けるかが焦点となりそうだ。
柔軟性を備えた電力システムへの移行が、持続的成長の鍵を握るとみられる。
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