NTTとドコモ、AIで1to1マーケ高度化 行動予測モデル「LAM」を共同確立

2025年11月12日、NTTとNTTドコモは、多様な顧客接点データをもとに行動を予測するAI技術「大規模行動モデル(LAM)」を共同で確立したと発表した。
テレマーケティングの受注率を従来比で最大2倍に向上させる効果が確認されており、一人ひとりのニーズに応じた1to1マーケティングの実現に寄与する技術である。
NTTとドコモがLAM確立、テレマ受注率2倍を確認
NTTとドコモが発表したLAMは、オンライン・アプリ・店舗などで得られる顧客接点を「4W1H(誰が/いつ/どこで/何を/どうした)」形式に統合し、行動の順序まで含めて学習する予測AIだ。
構造は大規模言語モデル(LLM)に類似しており、テキストではなくラベルや数値を扱う点に特化している。
NTTはLAMの研究開発とチューニングを担当し、ドコモはCX分析基盤を通じたデータ統合とモデル構築を実施した。
GPUサーバー「NVIDIA A100(40GB)」8基による145GPU時間の計算で学習を終え、一般的なLLMと比較して大幅な計算効率を実現したという。
構築されたLAMをテレマーケティング業務に適用したところ、顧客ごとの提案有効性を示すスコアに基づく優先案内により、モバイルやスマートライフ関連サービスの受注率が従来比で最大2倍に向上した。
さらに、来店が難しい子育て層や料金プランの変更に迷うユーザーなどに対し、適切な時期に提案できた事例も確認されている。
今後の展望として、NTTは医療・エネルギーなど他分野への展開を進めており、電子カルテの治療履歴や衛星観測データなど非言語データの解析で成果を目指す構想を示している。
ドコモ側も1to1マーケティングの高度化を通じて、一人ひとりのニーズに合ったきめ細かなサービス提案への活用を進めるとしている。
1to1強化の利点と課題、LAMがもたらす今後の展開
LAMの導入による最大の利点は、顧客行動を“順序”で捉えて理解できる点だろう。
「閲覧→電話→購入」「電話→閲覧→購入」といったように、行動の並び方によって意図や関心度は変化するため、この違いを踏まえた提案ができることは大きい。
これにより、営業リソースを優先度高く配分でき、過度な接触を避けながら成果を高める運用が期待できる。
一方で、提案対象やタイミングをAIが自動判断する仕組みである以上、推論過程の透明性やデータ利用のガバナンスは大きな論点となるだろう。
説明性が不足すれば利用者に不安を与えかねないため、行動ログの偏りが特定層への集中した案内につながる懸念も残る。
そのため、精度向上と並行して監査や運用ルール整備を行うことが不可欠となりそうだ。
1to1マーケティングの精度競争が進むなかでは、提案の自然さや受容性が差別化要因となり得るため、LAMは「次の行動を先読みする技術」として他業界にも波及する可能性がある。
通信事業者以外の領域にも広がれば、データ活用モデルの新たな形式として定着するかもしれない。
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