レノボ、AI需要が業績押し上げ 米中関税休戦延長に「確実性高まる」

2025年8月14日、中国パソコン大手レノボは、米中が関税一時停止を延長したことについて「前向きな状況」と評価した。
国内の人工知能(AI)インフラ投資が好調に推移し、4〜6月期決算は市場予想を上回る伸びを記録したという。
関税休戦下で四半期売上22%増、AI需要が牽引
レノボの楊元慶最高経営責任者(CEO)は決算発表後、ロイターのインタビューに応じ、米中間の関税一時停止延長を「不確実性よりも確実性が増え、前四半期よりも良い感触だ」と評価した。
米中は今回、停止措置を11月まで90日間延長することで合意している。
4〜6月期決算では、売上高が前年同期比22%増の188億ドルに達し、LSEG集計の市場予想(174億ドル)を上回った。
株主帰属純利益は5億0500万ドルと、前年同期比で倍増、市場予想(3億0770万ドル)も大きく上回った。
同社は3つの主要事業部門すべてでAI需要が旺盛で、2桁成長を達成。出荷PCのうち30%超はAI機能搭載モデルだった。
さらに、国内の旺盛な需要を背景にAIサーバー事業は150%の成長を記録した。
楊氏は「AIサーバーの引き合いは非常に強い」と述べ、中国のAIインフラ市場が世界の他地域よりも速く成長しているとの見方を示した。
関税停止中も中国から米国への輸出には30%の関税が残るが、同社の米国市場の売上比率は20%未満であり、また、複数拠点による製造体制により影響は限定的だという。
同社は、半導体を巡る米中摩擦の長期化を見据え、サプライチェーンの多様化にも注力している。
楊氏は「当社はグローバル製品を販売できるだけでなく、顧客の様々な要求に応えるため、最高の国産部品を開発するため多大な投資をしている」と、グローバル製品の供給力維持と地域別ニーズへの対応を両立させる方針を示した。
国内AIインフラ加速と地政学リスク対応、成長持続の鍵に
レノボは、生成AIやクラウドサービスの普及を背景に急拡大するAIパソコンやAIサーバー需要を追い風に、中国国内でのインフラ整備を一層加速させるとみられる。
短期的には国内市場が成長の主軸となり、関税一時停止による安定期を活用してサプライチェーンの多様化や国産部品開発を継続する可能性が高い。
ただし、米中摩擦が再燃すれば市場環境は急変し得る。
米国市場への依存度は低いものの、世界的な供給網に依存する同社にとって、物流や部材供給の混乱は依然として大きなリスク要因だろう。
将来的には、国内インフラ整備の進展が競争優位性を高める一方で、海外市場における立ち位置が新たな課題になると予測できる。
特に、米欧での規制強化が現実化すれば、製品仕様や販売チャネルの再構築が避けられず、現地生産拠点の活用や部品調達の地域分散といった柔軟な戦略が必要になりそうだ。
政治環境や規制の変化に即応できる体制を構築できるかが、レノボの持続的成長を左右すると言える。
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