キヤノンITS、西東京データセンターで液冷対応エリアを増床 生成AI需要に対応

2025年6月17日、キヤノンITソリューションズ株式会社(キヤノンITS)は、「西東京データセンター」2号棟に、液冷方式に対応したハウジングサービスエリアを増床すると発表した。
生成AIやHPC需要の拡大を受けてのものであり、2026年6月のサービス開始を目指す。
液冷方式ハウジングの需要増加に対応、100kVA対応ラックを拡充へ
キヤノンITSは、自社が運営する西東京データセンター2号棟において、液冷方式に対応したハウジングサービスエリアの増床を決定した。
背景には、生成AIやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野での高性能/高発熱サーバー需要の急拡大がある。
同社は2024年12月より、直接液冷方式(DLC:Direct Liquid Cooling)(※)に対応したハウジングサービスの提供を開始しており、1ラックあたり最大100kVAという高負荷対応を実現してきた。
今回の増床により、さらに多くの液冷対応サーバーを収容可能になる見込みだ。
新エリアでは、最新のDLC技術に対応する冷却供給能力と柔軟な供給方式を採用する。空冷方式との併設も可能で、混在環境にも対応できる仕様となっている。
サービスエリアでは、最大供給電力2000kVA、床耐荷重は1.5t/㎡に設定されており、大規模構成にも対応可能だ。
※直接液冷方式(DLC):冷却液をサーバーの熱源に直接循環させて冷却を行う方式。空冷と比較して高い冷却効率を持ち、高密度なサーバー配置が可能になる。
AI・HPC時代に即応 液冷データセンターが果たす役割とは
今回の増床は、液冷方式を求める企業の増加傾向を受けた戦略的判断といえる。
生成AIモデルのトレーニングや推論処理に使用されるサーバー群は、従来の空冷方式では冷却効率が限界に達しつつある。DLCはその課題を解決する冷却手法として注目されており、電力効率やスペース効率の面でも優位性を持つ。
キヤノンITSも、液冷方式ハウジングの運用実績とエンジニアリング技術を武器に、次世代ITインフラの提供企業としての地位を固めたい考えだろう。
一方で、液冷環境には設備初期コストや運用管理の高度化といった課題があると考えられる。
冷却液の選定や漏洩対策、長期的なメンテナンス体制の整備は、導入を検討する企業にとって慎重な判断材料となるだろう。
キヤノンITSは、今後も最新技術の導入と柔軟なサービス設計を継続し、進化するデータセンターの在り方に対応していく方針を示している。