生成AIの業務導入、日本は4割止まり 米国との差に「主体性」の壁

2025年6月16日、インディードリクルートパートナーズが公表した調査によると、日本国内の会社員で生成AIを業務に導入している割合は4割に満たず、米国の7〜9割と大きな差があることが明らかになった。
主因として、AI学習に対する日本人の「主体性の欠如」が指摘されている。
生成AI導入、日本は米国に大きく遅れ
同調査は、日本と米国の20〜59歳の会社員を対象に、昨年実施されたもので、それぞれ約4000人の回答を集計した。
その結果、生成AIが業務に「導入済み」と答えた人は、米国で7〜9割に達した一方、日本では3〜4割にとどまった。
特に営業・事務職においては、日米ともに導入率が比較的低い傾向にある。
調査は、2024年5月から9月に行われ、米OpenAIがChatGPTを公開してから約2年半が経過したタイミングにあたる。
すでに多くの米企業ではAIが活用され始めている一方、日本では業務への定着がまだ進んでいない現状が浮き彫りとなった。
インディードリクルートパートナーズの高田悠矢特任研究員は、日米間の導入格差について「AIに対する嫌悪感は少ないものの、キャリアに対するスタンスの違いが大きい」と指摘する。
日本では依然として「キャリアを会社に預ける」という意識が強く、自発的にAIを学び、活用するという文化が根付いていないと分析している。
「キャリアの主体性」が欠如しているという指摘に象徴されるように、日本は個人主導のスキルアップ文化が乏しい可能性がある。
会社が与える仕事を受動的にこなす姿勢のみでは、変化のスピードが速いテクノロジーの分野において、致命的な遅れを生みかねないだろう。
普及の鍵は「必要性の自覚」と成果への期待か
AI導入の鈍化には、知識不足と実感の欠如も関係している。
調査では、日本人の多くが生成AIの利用法を知らず、日常生活においても使っていない実態が判明した。
プライベートで生成AIの利用をしていないと回答した割合は、日本で約7割に対し、米国では3割程度にとどまる。
ただし、日本にも変化の兆しはある。
インディードハイアリングラボのエコノミストである青木雄介氏は、「生成AIが生産性や賃金にプラスの効果をもたらすという期待が重要」と指摘する。
実際、調査では「AIによる業務代替リスク」を知った後に職場でのAI使用意欲が高まる傾向が見られたという。
今後の展開を予測する上で鍵となるのは、「必要性の自覚」と「成果への期待感」である。
今回の調査でも明らかになったように、AIが生産性や賃金に寄与する可能性を認識した人ほど導入に前向きな傾向がある。
これは、実際の成功事例や可視化されたメリットが行動変容の強力なトリガーになることが考えられる。
したがって、政府や企業は、単なる技術提供にとどまらず、AI導入による成果の提示と、そのために必要な知識・スキルの獲得支援を明確に設計する必要があるだろう。