シャープは大手衛星オペレーターのSESと、衛星通信サービス分野のパートナーシップ構築に向けて基本合意した。
日本国内でMEO衛星通信サービスを展開し、海上や山間部など地上通信が不安定なエリアでの産業利用を目指す。
シャープ、SESとMEO衛星通信で協業へ
2026年6月30日、シャープは、宇宙ソリューションを提供するSESと、衛星通信サービス分野における協業に向けた協議を開始すると発表した。
対象となるのは、SESが提供する中軌道衛星通信サービス「O3b mPOWER(※)」の日本国内展開である。
SESは、複数の衛星軌道を活用した通信サービスを世界で展開している。
メディア配信に加え、航空、海事、政府機関、企業向けの高性能通信など、幅広い分野で衛星ネットワークを提供してきた。
O3b mPOWERは、大容量、低遅延、セキュアで安定した通信性能を特長とし、通信需要が高いエリアへ必要な容量を重点的に割り当てられる。
シャープは、スマートフォン開発で培った通信技術や小型・軽量化のノウハウを生かし、フラットパネルアンテナ搭載の衛星通信ユーザー端末の開発を進めている。
今回の基本合意では、SESの衛星ネットワークとシャープの端末・通信技術を組み合わせ、日本国内での衛星通信サービス提供を検討する。
また、シャープは機器の販売にとどまらず、システム構築や運用までを含めたサービスの提供を目指すとしている。
活用先として、海上や山間部など地上ネットワークで安定通信を確保しにくい場所での産業利用、遠隔地の設備や重機の通信接続、無人車両の運行管理などを挙げている。
※O3b mPOWER:SESが提供する中軌道衛星通信サービス。大容量、低遅延、安定性を特長とし、通信需要の高い地域へ必要な通信容量を割り当てられる。
産業通信の空白地帯を埋める可能性
今回の協業は、日本国内の産業通信における空白地帯を補う動きと捉えられる。
海上、山間部、遠隔地の設備現場では、セルラー通信を含む地上ネットワークだけでは安定した接続を確保しにくい場面もある。
MEO衛星通信を組み合わせれば、これまで通信品質が制約となっていた領域でも、遠隔監視や機械制御、運行管理の高度化が進む可能性がある。
特に重要なのは、端末開発とネットワーク活用を一体で考えている点だと言える。
衛星通信は通信インフラそのものの性能だけでなく、現場に設置しやすい端末、運用負荷の低さ、既存システムとの接続性まで整って初めて、企業の導入判断につながるとみられる。
シャープが小型・軽量化のノウハウを生かせれば、衛星通信を特殊な用途に限らず、より広い産業現場へ広げる余地が生まれるだろう。
一方で、普及には課題も考えられる。
衛星通信サービスは、端末費用、利用料、導入時のシステム設計、保守運用の負担が導入企業にとって判断材料になり得る。
地上ネットワークで十分な地域では代替手段として選ばれにくく、対象市場は当面、通信確保が事業継続や安全性に直結する用途に絞られる可能性が高い。
それでも、無人車両や遠隔設備の活用が広がるほど、通信環境は単なる補助インフラではなく、事業の継続性や安全性を支える基盤として重要性を増すと考えられる。
シャープが端末販売にとどまらず構築・運用まで担うサービスモデルを整えられれば、衛星通信は非常時の補完手段ではなく、産業インフラの一部として存在感を高めていきそうだ。
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