2026年6月23日、ai& Inc.(株式会社エーアイ・アンド)は、日本企業向けAI推論プラットフォーム「ai& Inference」の提供を開始した。海外AIサービスの代替としてAI利用コストを最大80%削減するとともに、日本国内で推論処理を完結できる環境を提供し、企業のAI活用を後押しする。
国内完結のAI基盤で低コスト運用を実現
「ai& Inference」は、日本企業向けに設計されたAI推論プラットフォームである。海外の大規模言語モデル(LLM)を利用する企業が抱えるコストや通信遅延、データ主権※1といった課題に対応することを目的として開発された。
最大の特徴は、フロンティアモデルから軽量モデルまで複数のAIモデルを単一APIで利用できる点にある。用途に応じて最適なモデルへ自動的に振り分けることで、高度な推論性能を維持しながらAI利用コストを最大80%削減できるとしている。
既存のClaudeやGPTシリーズを利用している企業は、APIの接続先を1行変更するだけで導入できる設計となっており、移行負担を抑えられる点も特徴だ。また、すべての推論処理を国内インフラ上で実施するため、海外通信によるレイテンシ※2を抑えられるほか、金融・医療・公共分野などデータ管理要件が厳しい業界でも活用しやすい環境を提供する。
※1:データ主権:企業や組織のデータを、どの国の法律や管轄のもとで管理・処理するかという考え方。規制産業では国内でのデータ管理が求められるケースが多い。
※2:レイテンシ:データ送受信や処理に発生する遅延時間。AIサービスでは応答速度や業務効率に影響を与える重要な指標。
日本発AI基盤の競争力向上へ期待と課題
生成AIの企業導入が進む中、AI利用料はエージェント化の進展によって急速に増加している。複数回の推論やツール呼び出しを伴うワークフローでは、従来のチャット利用より大幅にコストが膨らむケースもあり、運用費用が本格導入の障壁となりつつある。
こうした状況で、国内インフラを活用した低コストな推論基盤が普及すれば、日本企業がAIエージェントを本格運用しやすくなる可能性がある。通信遅延の低減や国内法に準拠したデータ管理は、規制産業だけでなく幅広い企業にとって導入判断を後押しする要素となるだろう。
一方で、海外のフロンティアモデルは依然として急速な性能向上を続けている。日本発サービスが競争力を維持するためには、価格だけでなく推論性能や運用実績、継続的なモデル更新が重要になると考えられる。
ai&は今後3年間で約3,000億円規模を投じ、日本国内に100MW級AIデータセンターを複数建設する計画も掲げている。国内インフラとAIサービスを一体運営する戦略が、日本企業のAI活用基盤としてどこまで市場に浸透するのか、今後の動向が注目される。