2026年6月2日、IIJ、NTTデータ、日比谷総合設備の3社は、AI基盤向けモジュール型エッジデータセンターの社会実装に向けた共同検証を開始すると発表した。急増するAI需要に対応するため、都市部や既存施設でも導入しやすい新たなデータセンターモデルの確立を目指す取り組みとして注目を集めている。
AI時代の都市型データセンター構築へ共同検証開始
今回の共同検証ではIIJが開発したモジュール型エッジデータセンター「DX edge Cool Cube」を活用し、NTTデータと日比谷総合設備が運営する「Data Center Trial Field」において実環境での評価を行う。
検証の最大の目的は、AIや高性能計算(HPC)※向けの高発熱・高密度な計算基盤を都市部や既存データセンターへ効率的に導入できる仕組みを確立することにある。近年は生成AIの普及によってGPUサーバー需要が急増しており、それに伴う電力消費や発熱量の増大が業界全体の課題となっている。
今回の実証では液冷サーバーと空冷設備を組み合わせたハイブリッド冷却方式を採用する。GPUを搭載した直接液冷サーバーに加え、ネットワーク機器やストレージなど空冷が前提となる設備も同時に運用し、冷却効率や安定性を検証する計画だ。
また設備を一体化したモジュール型構成によって短期間で導入できる点も重要な評価対象となる。都市部では新たな大規模データセンターの建設が難しくなりつつあり、既存施設へ柔軟に追加設置できる仕組みへの需要が高まっている。3社は運用データの可視化も行い、AI基盤の設計・運用指針の策定を進める方針である。
※HPC:High Performance Computingの略。科学技術計算やAI学習など、大量の演算処理を高速に実行する高性能計算技術。
分散型AIインフラ普及の鍵に 冷却コストや運用課題も
今回の取り組みは国内で深刻化しつつあるAI向けデータセンター不足への有力な解決策となる可能性がある。従来は大規模施設への集約が主流だったが、モジュール型データセンターが実用化されれば、工場や研究施設、医療機関などデータ発生地点の近くでAIを運用する「エッジAI」の普及が加速すると考えられる。
特に機密性の高いデータを外部クラウドへ送信せずに処理できる点は大きなメリットだ。製造業の品質検査や医療画像解析など、低遅延かつ高いセキュリティが求められる分野では導入効果が大きいとみられる。また分散配置によって通信負荷を軽減できるため、今後のAI社会を支えるインフラとしての期待も高まる。
一方で液冷技術の運用ノウハウや設備管理の複雑化といった課題も残る。高密度なAIサーバーは冷却性能の維持が不可欠であり、導入後の保守体制や運用コストの最適化が普及の鍵を握るだろう。
今後、3社は検証結果をもとに都市型データセンター向けの設計・運用モデルを確立し、商用展開を視野に入れる。AI需要の拡大が続くなか、今回の実証は日本における次世代デジタルインフラ整備の重要な一歩になると言えそうだ。