NTT、クボタ、NTTドコモは日本国内の山間部でロボット農機の遠隔操作・遠隔監視に関する共同実証を実施したと発表した。
モバイル通信と衛星通信を組み合わせ、通信品質が変動する環境でも映像伝送の視認性を維持できることを確認した。
山間部で農機の遠隔操作を検証
2026年5月25日、NTT、クボタ、NTTドコモは、山間部におけるロボット農機の遠隔操作・遠隔監視時に、通信の安定化と映像伝送の継続性を確保する共同実証を実施したと発表した。
実証では、ロボット農機の走行に必要な映像伝送について、モバイル通信と衛星通信を組み合わせた最適制御を行い、通信環境が変動する場所でも映像の視認性を維持できることを確認した。
背景には、農業現場の人手不足と、作業自動化への需要拡大がある。
日本では、ロボット農機の公道走行について、遠隔監視による安全性確保を前提とした規制緩和に向けた制度整備が進められている。
一方、日本の耕地面積の約4割を占める中山間地域では、地形や遮蔽物の影響でモバイル通信が不安定になりやすい。
ほ場内やほ場間の移動中に遅延や切断が発生すれば、遠隔操作の安全性に直結する課題となる。
今回の実証では、通信状況に応じてモバイル通信と衛星通信の複数回線を制御するマルチパス技術(※)を適用した。
モバイル通信の品質が低下しやすい区間では衛星通信を併用し、通信の安定性を高めた。
さらに、通信帯域に応じて映像圧縮を自動調整し、進路や農作物など重要な領域の画質を優先的に確保する映像制御技術も導入した。
各社の役割も明確に分担された。NTTは無線品質予測技術「Cradio」と、品質予測に基づく複数回線の最適制御技術「協調型インフラ基盤」を提供した。クボタはロボット農機と実証フィールドを提供し、NTTドコモは重要領域の映像品質を確保しながら不要なデータを圧縮する映像制御技術を担った。
※マルチパス技術:複数の通信回線を同時または状況に応じて使い分ける技術。通信品質が低下した場合でも別回線で補完でき、遠隔操作や映像伝送の安定性向上につながる。
完全無人化へ通信基盤が焦点に
今回の実証は、ロボット農機の実用化に向けて、通信インフラが単なる補助要素ではなく、安全性を左右する中核技術であることを示したと言える。
特に山間部では、都市部のようにモバイル通信だけで安定した接続を前提にすることは難しい。
そのため、衛星通信を組み合わせた冗長な通信設計は、遠隔操作の信頼性を高める現実的な選択肢になる。
メリットは、農作業の省人化だけにとどまらない。ロボット農機を遠隔から安全に監視・操作できるようになれば、熟練者が複数の作業現場を管理する運用も見えてくる。
高齢化や担い手不足が進む地域では、限られた人員で広い農地を維持する手段になりうる。
また、映像品質を重要領域に集中させる仕組みは、通信容量が限られる環境でも必要な情報を確保する技術として応用範囲が広い。
一方で、実用化には課題も考えられる。衛星通信を併用する場合、通信コストや機器設置、天候や地形による影響をどう抑えるかが重要になる。
さらに、遠隔監視を前提にした農機運用では、通信障害時の停止制御、責任分界、現場での緊急対応なども制度面と運用面の両方で詰める必要があるだろう。
今後は、今回確認された通信安定化と映像制御の技術を、実際の営農環境でどこまで継続的に運用できるかが焦点になる。
完全無人化の実現には、農機そのものの自動走行性能に加え、通信、映像、監視、規制対応を一体で整えることが欠かせない。
今回の取り組みは、山間部でもスマート農業を広げるための基盤整備として重要な一歩になる可能性がある。
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