韓国サムスン電子の労働組合は、会社側との賞与交渉決裂を受け、21日から18日間の大規模ストライキを実施すると発表した。
対象は約4万8000人に及び、AI向け半導体供給や韓国経済全体への影響が懸念されている。
賞与交渉決裂、半導体部門で大規模ストへ
韓国サムスン電子の労働組合は、賞与制度を巡る経営側との交渉がまとまらなかったとして、2026年5月21日から18日間のストライキに突入する方針を、5月20日に正式表明した。
参加予定者は約4万8000人で、国内従業員の38%を占めるという。組合員の多くは半導体関連部門に所属しており、世界的なAI半導体需要が高まるなかでの労使対立として注目を集めている。
労組側は、政府仲裁機関が示した最終調停案を受け入れた一方、会社側が最後まで賞与制度改革に応じなかったと説明している。
組合は、年間給与50%を上限とする現行賞与制度の撤廃に加え、営業利益の15%を賞与原資として配分する新制度を要求していた。また、それを一時的措置ではなく恒久制度とするよう求めていた点も争点となった。
これに対しサムスン電子は、「合意に至らなかったのは、労組の過剰な要求を受け入れれば、会社経営の基本原則が損なわれるためだ」と説明している。韓国政府は経済への悪影響を警戒し、緊急仲裁発動の可能性にも言及していたが、20日時点では「対話余地は残っている」として即時介入には慎重姿勢を示した。
市場も反応を強めている。サムスン株は20日の取引で一時1.6%下落し、過去1週間では4.5%安となった。背景にはストによる短期的損失だけでなく、賃上げ定着による長期的な人件費増加への警戒感があるとみられている。
AI半導体競争に広がる人材流出リスク
今回のスト問題は、単なる労使対立を超え、AI時代の半導体産業が抱える構造問題を浮き彫りにしている。
現在は生成AI需要の急拡大によって高性能メモリー市場が逼迫しており、サムスンのような主要メーカーの生産停滞は、世界的な半導体価格や供給網に影響を与える可能性がある。
一方で労組によれば、昨年のSKハイニックスの賞与はサムスンの3倍超に達し、その結果として優秀な人材流出が進んでいるという。経営面にも触れつつメッセージを発している状態だ。
ただし、企業側が要求を大幅に受け入れれば、人件費構造そのものが変化し、収益性悪化を招くリスクもある。特に半導体産業は市況変動が激しく、好況期を基準とした高水準報酬が固定化すれば、不況時の経営負担が急増しかねない。
今回の対立を通じて、韓国半導体産業が「AI需要による成長」と「人件費高騰」という二重圧力に直面している構図が鮮明になった。
今後は、単純な賃上げだけではなく、人材流出防止と国際競争力維持を両立する新たな報酬設計が問われる局面に入りつつある。
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