2026年4月7日、長崎県立長崎東高校の生徒がAIを用いて戦前のモノクロ写真をカラー化し写真集を制作したことが各メディアで報じられた。戦争記憶の継承にデジタル技術を活用する新たな動きとして注目される。
戦前写真をAIで再現 高校生が写真集制作
長崎県立長崎東高校の生徒9人は、戦前の長崎の人々の日常を写したモノクロ写真20点を人工知能(AI)でカラー化し、写真集「あの日に色がさすとき」を制作した。題材には、1934年の風頭公園での遠足風景や、1936〜37年ごろに商店前で遊ぶ子どもたちの様子などが選ばれている。
本プロジェクトは2025年6月から探究学習の一環として始動した。AIによる画像カラー化(※)の精度を高めるため、専門家の指導を受けつつ、当時の資料や証言をもとに色味の検証を重ねた点が特徴である。被写体に関係する当事者の話も取り入れ、可能な限り実像に近づける工夫がなされた。
2025年9月の文化祭での展示をきっかけに反響が広がり、クラウドファンディングで制作資金を調達。完成した写真集は2026年3月に仕上がり、図書館など35カ所に寄贈された。さらに長崎市長は国際会議への持参にも言及しており、若い世代による発信として国内外への波及も見込まれる。
※画像カラー化:白黒写真に対してAIが過去データを基に色情報を推定し付与する技術。視覚的理解を高める一方、実際の色と完全に一致する保証はない。
AI継承の可能性と再解釈リスク
今回の取り組みは、戦争記憶の継承における表現手法を拡張する試みといえる。カラー化によって当時の生活が具体的に想像しやすくなり、歴史を「過去の出来事」ではなく「連続する現実」として捉える契機になり得る。特に若年層に対しては、視覚的理解を促す効果が期待される。
加えて、AIを活用したコンテンツはSNSとの親和性が高く、情報拡散の面でも優位に働く可能性がある。従来の展示や文章中心のアプローチと比較して、より多くの人々にリーチできる点は大きな利点と考えられる。地方発の取り組みがグローバルに共有される可能性も高まりつつある。
一方で、AIによる色付けは推定に基づくものであり、史実の厳密な再現ではない。解釈のズレが蓄積すれば、誤った歴史認識を助長するリスクが生じる可能性もある。また、視覚的な魅力が強調されることで、出来事の本質よりも表現が先行する懸念も指摘される。
今後は、技術活用と史実の正確性をいかに両立するかが重要な論点になるとみられる。教育機関や研究者との連携を前提とした運用が求められ、AIは補助的手段として位置づける視点が重要になる。適切に活用されれば、記憶継承の新たな基盤として定着していく可能性がある。
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