2026年4月1日、Brazeは東京ガスがAIドリブン顧客エンゲージメント基盤としてBrazeとDatabricksを採用したと発表した。データとAIの統合により、顧客体験の高度化と関係性の深化を図る国内DXの先進事例として注目される。
Braze×Databricks導入の全容
東京ガスは、約1,300万の顧客基盤と約460万のデジタル会員を背景に、顧客接点の高度化に向けた基盤刷新を進める。今回採用されたのは、顧客エンゲージメント基盤であるBrazeと、同社のデータ・AI基盤であるDatabricksの連携モデルである。
両者はデータの移動や複製を伴わない疎結合型で接続され、リアルタイムでのデータ分析と施策実行を可能にする構成となっている。これにより、アプリやWeb、メール、LINEなど複数チャネルを横断した一貫性のあるコミュニケーション設計が実現する。
加えて、AIを活用した1to1コミュニケーションの高度化も特徴だ。顧客行動データを基にしたパーソナライズ配信や、継続的な仮説検証を通じて、施策の精度向上が図られる。従来の一斉配信型から、個別最適化された体験提供へと転換が進む構図である。
さらに、ノーコード環境によるマーケター主導の運用も導入される。セグメント作成や配信設計、検証までを現場主導で完結できるため、PDCAサイクルの高速化と再現性のある運用体制が構築される見込みだ。これらの取り組みは、中期経営計画に掲げる「顧客との関係深化」と「デジタル接点拡大」の具体化と位置付けられている。
※LTV:Life Time Valueの略。顧客が企業にもたらす生涯価値を示す指標で、継続利用や追加購入を含めた総収益を基に算出される。
LTV向上の可能性と運用リスク
今回の基盤構築は、顧客ロイヤルティおよびLTV(※)の最大化に寄与する可能性がある。ガス・電気といった基盤サービスに加え、生活関連サービスまでを横断した体験設計が実現すれば、クロスセルによる提供価値の拡張が期待できるためだ。顧客ごとの最適な接点設計が進むことで、継続利用の促進にもつながると考えられる。
一方で、データとAIへの依存度が高まることで、新たなリスクが顕在化する可能性もある。リアルタイム連携により扱うデータ量が増大する中、プライバシー保護やデータガバナンスの重要性はさらに高まるとみられる。AIによる意思決定のブラックボックス化も、説明責任の観点から課題となる可能性がある。
また、ノーコード環境による現場主導の運用は、スピードと柔軟性を高める一方で、施策品質のばらつきや統制の難しさを招く可能性がある。こうした状況に対応するためには、組織全体でのガイドライン整備や監督体制の強化が求められる場面も出てくるだろう。
それでも、インフラ企業が顧客体験を競争領域として再定義する動きは、今後加速していく可能性がある。エネルギー業界におけるデジタル接点の高度化は、他業界にも波及し、「データ起点の顧客関係構築」が新たな標準となる展開も想定される。
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