2026年4月1日、神戸市の甲南大学の入学式にて、創立者を再現したAIロボットが祝辞を述べたとメディアが報じた。自伝や講演集をもとに生成されたスピーチと音声合成により、歴史的人物の思想を現代に伝える新たな教育演出として注目を集めた。
創立者再現AIロボが祝辞披露
今回登場した「AI平生ロボット」は学校法人甲南学園の創立者である平生釟三郎の思想や人物像を再現する目的で開発されたもの。知能情報学部の研究者と大学院生ら約10人が中心となり、過去の自伝や講演記録から理念や価値観を抽出しAIに学習させた。
生成された祝辞は音声合成技術によって再現され、ロボット本体は生前の体格をもとに設計されている。2025年はバーチャル空間での登壇にとどまっていたが、今回は特注スーツを着用した実体ロボットとして式典に登場し、現実空間での存在感を強めた点が特徴だ。
当日は新入生約2000人を前に「甲南大学には、世界に通用する紳士淑女たれという理念があります。これからの道がどんなに困難でも、勇気と誠実さを忘れず、成長を続けてください」と激励の言葉が送られた。視線を動かしながら語りかける演出により単なる映像再生とは異なる没入感が生まれ、教育イベントの新たな表現手法として一定の効果があったと考えられる。
この取り組みは人物の思想や発言をデジタル上で再構築する「デジタルツイン」の応用例としても位置づけられ、今後はオープンキャンパスなどでの活用も予定されている。
教育×デジタルツインの可能性と課題
歴史的人物をAIで再現する試みは教育現場における理解促進の手段として大きな可能性を持つ。抽象的な理念や思想を「体験」として提示できるため、学生の記憶定着や関心喚起に寄与する効果が期待される。また、大学ブランドの差別化や広報施策としても機能しうる点は見逃せないだろう。
一方で、再現された発言の正確性や解釈の偏りといった課題も存在する。AIが過去資料から生成する内容はあくまで推定であり、本人の真意を完全に再現しているとは限らない。教育用途で用いる場合には、史実との区別や補足説明が不可欠となるだろう。
さらに、著作権や人格権に関する議論も今後の焦点となる可能性がある。故人の言動をAIで再構築することがどこまで許容されるのか、社会的な合意形成が求められる局面に入りつつある。
こうした課題を踏まえつつも、AIとロボティクスを組み合わせた教育DXは確実に進行している。今後は他大学や企業研修などへの展開も視野に入り、実在人物の知見を「再利用」する新たな知識伝達の形が広がっていく可能性が考えられる。