タイのAIスタートアップ企業アミティは、シリーズDで1億米ドルを調達したと発表した。
東南アジア最大級の生成AI分野での資金調達であり、欧州およびシンガポールでの事業拡大を本格化させる。
アミティ、欧州中核にAI拡張戦略
アミティはシリーズDラウンド(※1)で1億米ドルを調達し、資金をシンガポールでの深層AI研究開発拠点の新設と、欧州および東南アジアでの事業拡張に投じると、2026年3月25日に発表した。
ラウンドはシンガポール経済開発庁の投資部門EDBインベストメンツ(EDBI)が主導し、アジアの複数投資ファンドが参加した。
本件は、生成AI領域における東南アジア最大級の調達規模となる。
同社の収益はすでに欧州市場に強く依存しており、EBITDA(※2)の75%超を同地域が占める。
欧州全域で600以上の病院や政府機関にAIソリューションを提供しており、英国では通信分析ソフト企業トールリングを買収し、自社AI技術を導入することで収益を50%押し上げた実績を持つ。
アミティの2025年の売上高は、2022年比で10倍超の約1億米ドルに成長しており、2026年は2億米ドル規模への成長を目標としている。
さらに、来年中に主要国の証券取引所に上場することも計画している。
※1シリーズDラウンド:スタートアップが成長後期に、海外展開や買収、上場準備などに向けて行う資金調達ラウンド。
※2 EBITDA:利払い・税引き・減価償却前利益。企業の本業の収益力を測る指標として用いられる。
成長機会と規制リスクの交錯
アミティの戦略は、東南アジア企業がグローバルAI市場で存在感を高めた好例といえる。
欧州の医療・公共領域に深く入り込み、安定した需要を確保したことにより、今後も大きな収益を維持し続けられるだろう。
また、計画通りにシンガポールに研究開発拠点を設立できれば、アジアと欧州を接続する技術開発体制を構築できる可能性がある。
一方で、欧州はAI規制が厳格な市場であるため、AI法(※3)への適合コストやデータ管理要件への対応は無視できない負担となるはずだ。
規制対応が遅れれば、事業拡張のスピードが制約されるリスクも想定できる。
さらにM&Aを軸とした拡張は短期的な成長を促進する一方で、統合コストや組織の複雑化を招く可能性がある。
今後は上場を通じた資金調達力の強化と、規制対応を前提とした持続的成長モデルの構築が鍵を握りそうだ。
東南アジア発AI企業が欧州市場でどこまで競争優位を確立できるかは、技術力だけでなく、ガバナンスと適応力に依存すると考えられる。
※3 AI法:欧州連合が策定した人工知能規制法。リスクに応じてAIの利用を分類し、高リスク用途には厳格な要件を課す枠組み。
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