米国のドナルド・トランプ大統領がAI政策を助言する諮問委員会に、メタやエヌビディア、オラクルのCEOらを指名したと発表された。
国家のAI戦略に民間テック企業の影響力が直接組み込まれる体制となる。
トランプ、AI諮問委にIT大手3氏起用
現地時間2026年3月25日、トランプ大統領は、米国の科学技術政策を担う大統領科学技術諮問委員会(PCAST)に、メタのマーク・ザッカーバーグ氏、オラクルのラリー・エリソン氏、エヌビディアのジェンスン・フアン氏らを含むメンバーを任命した。
委員会は最大24人規模で構成され、科学技術や教育、イノベーション政策について大統領に助言する役割を担う。
今回の人選は、AI開発を主導する民間企業のトップを諮問委員会に直接関与させる点が特徴だ。
エヌビディアは生成AI向け半導体で市場を牽引しており、メタは大規模言語モデルやソーシャルプラットフォームを通じてAI応用の最前線に位置する。
背景には、トランプ政権が科学技術分野における米国の主導力強化を重視し、その一環としてAIを含む新興技術への対応を進めている姿勢がある。
政権はすでに、州ごとに分断されたAI規制を統一する国家的枠組みの整備を議会に提示しており、AIシステムによる言論抑制の防止も政策目標として掲げている。
また、第1次政権時には対立していたシリコンバレー企業との関係が大きく変化している点も注目される。
ザッカーバーグとの関係修復や、エリソンによる資金支援など、政治とテック業界の距離は第二次政権で急速に縮まっていると言える。
※PCAST:大統領科学技術諮問委員会。米国の科学技術政策や研究開発、教育分野について大統領に助言を行う諮問機関で、産業界や学術界の専門家で構成される。
産業主導AI政策の利点とリスク
今回の人選は、AI政策の実効性を高めるという観点では合理的と評価できるだろう。
最先端の技術動向や市場構造を熟知する企業経営者が政策形成に関与することで、規制とイノベーションの乖離を抑え、迅速な意思決定が可能になると考えられる。
特に、半導体供給やAIモデル開発といった基盤領域では、民間主導の知見が不可欠だ。
国家が産業の実態に即したルール設計を行うことで、国際競争力の強化につながる可能性は高い。
一方で、規制対象である企業自身が政策に関与する構造は、利益相反のリスクを内包する。
また、言論の自由や検閲防止を掲げる政策方針についても、プラットフォーム企業との関係性次第では恣意的な運用につながる懸念がある。
特定の政治的立場に基づくアルゴリズム調整が行われた場合、AIの中立性に対する信頼が損なわれる可能性も否定できない。
今後は、民間主導のスピードと公共性の確保をいかに両立させるかが焦点となりそうだ。
AI政策が国家安全保障や経済競争の中核に位置付けられる中、ガバナンス設計の巧拙がそのまま国力に直結する局面に入ったと言えるだろう。
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