2026年3月24日、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、傘下のネット証券と資産運用会社を統合し新会社を設立すると発表した。AIを活用し顧客ごとに最適化された資産形成を実現し、銀行と投資を一体化した新たな金融体験の提供を目指す。
MUFG、証券とロボアド統合で新会社
MUFGは、インターネット証券「三菱UFJ eスマート証券」と資産運用会社ウェルスナビを統合し、2027年度中に新会社を設立する方針を明らかにした。約200万口座を有する証券基盤と、ロボアドバイザー(※)による自動運用の強みを掛け合わせ、幅広い投資ニーズへの対応を狙う。
新会社では、顧客の年齢や家族構成、資産状況などのデータをAIが分析し、金融商品の提案に加え、保険やローンの見直しまで含めた総合的な助言を行う。結婚や相続といったライフイベントに応じた提案も可能となり、従来の断片的なサービスからの転換が図られる。
さらに、2026年度開設予定のデジタルバンクと連携し、口座開設や各種手続きをオンラインで完結できる設計となる。証券口座やNISA口座もアプリ経由で開設可能とし、銀行と資産形成を横断した一体的な顧客体験の実現を目指す構想だ。
※ロボアドバイザー:AIなどを活用し、利用者のリスク許容度や目的に応じて資産配分を提案・運用するサービス。低コストで自動化された投資手法として普及が進む。
利便性向上と囲い込み、金融AIの分岐点
今回の統合は、金融サービスが「商品提供」から「個別最適化」へと進化する流れを象徴する動きと捉えられる。AIによる分析が進めば、利用者は自身の状況に応じた提案を受けられ、資産形成の意思決定が効率化される可能性がある。特に投資初心者にとっては、運用のハードルを下げる効果が期待される。
一方で、銀行・証券・保険といったデータの統合が進むことで、特定グループ内でのサービス利用が前提となる「囲い込み」が強まる可能性も指摘される。利便性の向上と引き換えに、他社サービスへの乗り換えが難しくなる構造が生まれる懸念は残る。
また、AIによる提案の透明性や説明責任は、今後の重要な論点の一つになるとみられる。どのようなロジックで商品提案が行われているのかが不明確であれば、信頼性に影響を及ぼす可能性があるためだ。今後は規制やガイドライン整備と並行し、金融機関の説明力が競争力に影響を与える局面に入ると考えられる。
メガバンク各社が証券連携を強化する中、今回の動きは競争の軸が「データとAI」にシフトしていく契機となる可能性がある。金融体験の差別化は、どこまで顧客理解を深められるかに依存する方向へ進むとみられる。
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