2026年3月23日、大日本印刷(DNP)は日本オラクルと協業し、製造業向け生成AIソリューションの提供を開始した。図面などAIが扱いにくい非構造データを構造化し、現場の意思決定高度化を狙う取り組みである。
図面をAI可読化し現場データを統合
DNPは、自社開発の「ドキュメント構造化AIサービス」と、日本オラクルの「Oracle Autonomous AI Database」を組み合わせたソリューションを提供する。製造業で扱われる図面や複雑なPDFといった非構造データは、従来のAIでは十分に活用できず、企業内に蓄積されながらも“使えない資産”となっていた。
同サービスは、文書のレイアウトや表構造を認識するAIにより、これらのデータを生成AIが理解可能な形式へ変換する。これにより、AIが誤回答を引き起こす原因となるデータ未整備の問題を解消し、ハルシネーション(※)の発生を約90%削減できるとする。
さらに、日本オラクルのデータベースと連携することで、過去の文書データとリアルタイムの業務データを横断的に検索・参照できるようになる。文書はベクトル検索(※)で意味的に取得し、在庫や設備情報はSQL検索で正確に取得する仕組みだ。
例えば、設備トラブル時に過去の保全記録と現在の在庫状況を同時に提示することで、現場での判断を迅速化できる。DNPは、こうしたデータ統合により、分断されていた情報をつなぎ、意思決定のスピードと精度を引き上げるとしている。
※ハルシネーション:生成AIが事実と異なる内容や根拠のない情報をもっともらしく生成してしまう現象。主に入力データの不備や構造の不整合に起因する。
※ベクトル検索:データの意味的な近さを数値化し、類似する情報を検索する手法。キーワード一致ではなく文脈理解に基づく検索が可能。
意思決定高度化の鍵はデータ整備に
今回の取り組みは、AI活用のボトルネックが「モデル性能」ではなく「データ整備」にあることを示す事例といえる。非構造データの構造化とリアルタイムデータの統合により、AIは単なる検索支援から実務判断の支援へと役割を拡張していく可能性がある。
メリットは大きいと考えられる。現場では情報探索や照合作業の手間が削減され、意思決定の迅速化と属人性の低減が期待できる。また、クラウド基盤の活用により、AIエージェントへの発展や機能拡張にも対応しやすくなる点は、優位性につながる可能性がある。
一方で、導入には前提条件が伴う。社内データの整備やシステムのモダナイゼーションが不十分な企業では、十分な効果を得られない可能性がある。また、業務データを横断的に扱う以上、セキュリティやデータガバナンスの再設計が重要になると考えられる。
今後は製造業にとどまらず、電力や自治体などデータ構造が複雑な分野への展開も見込まれる。AI活用の成否が「データをどう整えるか」に移行する中で、本領域の競争はさらに加速していく可能性がある。
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