2026年3月20日、米アマゾン・ドット・コムがスマートフォン事業への再参入を検討していると複数の海外メディアが報じた。過去に失敗した「Fire Phone」の教訓を踏まえ、AIを中核とした新端末の開発が進んでいる可能性がある。
AI中核の新スマホ計画が浮上
関係者によると、新たな開発計画は「トランスフォーマー」と呼ばれ、社内の専門チーム「ZeroOne」が主導している。設立から約1年の同チームは革新的な消費者向け製品の創出を使命とし、元マイクロソフト幹部のJ・アラード氏が率いる体制とされる。
新端末は音声アシスタント「アレクサ」との連携を前提に、EC、動画、音楽、フードデリバリーなど同社サービスを横断的に利用できる設計になる見通しだ。ユーザーの日常行動を一元化する「モバイルパーソナライゼーション端末」として位置付けられている。
最大の焦点は人工知能の統合である。AIがユーザーの意図を理解し、複数機能を横断して処理する構造が検討されており、従来のアプリストアを介さない操作体系に変化する可能性があるという。
また、同社は従来型スマートフォンに加え、機能を限定した「ダムフォン(※)」の投入も検討している。既存端末との併用を前提とした第2デバイスとして、新たな需要の開拓を狙う構えだ。
なお、アマゾンは2014年に初のスマートフォン「Fire Phone」を発売したが、独自OSによるアプリ不足やバッテリー問題などが影響し、約1年で撤退した経緯がある。今回の計画はその再挑戦に位置付けられる。
※ダムフォン:通話やSMSなど基本機能に特化した携帯電話。スマートフォンと比べ機能は限定的だが、低価格やシンプルな操作性からサブ端末として需要が再評価されている。
利便性と囲い込み、AI端末の分岐点
今回の構想は、スマートフォンの役割を大きく変える可能性がある。AIが操作の中心となることで、ユーザーは複数のアプリを使い分ける必要がなくなり、より直感的で一貫した体験を得られるようになると考えられる。これは特にECやコンテンツ消費において高い利便性をもたらす。
一方で、サービス統合が進めば、プラットフォームの閉鎖性が強まる可能性がある。アマゾン経済圏への依存が深まれば、他サービスとの競争や選択の自由が制限される懸念もある。過去の失敗についても、エコシステムの弱さが一因であった可能性がある。
さらに、AIによる高度なパーソナライズは、データ収集の範囲拡大と表裏一体である。利便性の裏側で、プライバシーやデータ利用の透明性がより厳しく問われる局面が想定される。
現時点では価格や投入時期は未定であり、計画自体が中止される可能性も残る。それでも、成熟したスマートフォン市場において「AIネイティブ端末」という新たな軸を提示できれば、競争構造を塗り替える契機となる可能性は十分にある。
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