2026年3月19日、シャープ株式会社は、AIとテレビを活用した「介護向けAIトレーナー」を開発したと発表した。機能訓練の計画から実施、記録までを一括支援し、介護現場の業務効率化と訓練の質向上を同時に実現する狙いだ。
AIが訓練計画から記録まで自動化
本ソリューションは、テレビに専用アプリを設定し、ウェブカメラと連携して利用する。利用者は画面上のAIキャラクターの問いかけに応じながら、起立や歩行などの動作を行い、その様子をAIが解析する仕組みである。
AIは会話内容や身体の動き、姿勢データをもとにアセスメントを実施し、個々に最適化された機能訓練計画を自動生成する。スタッフはパソコンやタブレットで計画を確認し、現場での訓練に活用する流れとなる。さらに、訓練の記録や評価、進捗に応じた計画の見直しまでを自動で行う点が特徴だ。
従来、機能訓練は利用者ごとの状態確認から計画策定、実施、記録、書類作成まで多岐にわたり、現場の大きな負担となっていた。本システムはこれら一連の業務を統合的に支援することで、効率化と質の維持・向上の両立を狙う。
また、厚生労働省の科学的介護情報システム「LIFE(※)」に対応し、個別機能訓練加算の申請に必要な書類作成も支援する。2025年には神奈川県の介護施設で実証が行われており、今後は実用化に向けた検証が進められる見通しである。
※LIFE:介護施設が利用者データを国に提出し、分析結果のフィードバックを受ける仕組み。科学的介護の推進を目的とした制度。
効率化の恩恵とAI依存リスクの両面
本取り組みの大きなメリットの一つとして、介護現場における業務負担の軽減が挙げられる。計画策定や記録作成といった事務作業が自動化されることで、スタッフは対人ケアや観察により多くの時間を割けるようになる可能性がある。加えて、データに基づく訓練設計により、個別最適化の精度向上も期待できる。
一方で、AIへの依存が進むことによるリスクも指摘される。身体機能の評価は微細な変化の把握が重要であり、AIの判断に過度に依存した場合、現場の専門的な気づきが相対的に弱まる可能性がある。判断プロセスの透明性や責任の所在も、今後の検討課題となり得る。
さらに、テレビとカメラを活用する仕組みは導入のハードルを下げる一方で、施設ごとの設備環境やITリテラシーの差が運用に影響する可能性もある。現場ごとの適応には、一定の調整が必要になると考えられる。
今後、政府の介護テクノロジー推進政策と連動した場合、本ソリューションは標準的なインフラへと発展する可能性もある。AIと人間の役割分担をどのように設計するかが、介護の質と持続性を左右する重要な論点になるとみられる。
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