2026年3月10日、行動認識AIを開発する株式会社アジラ(東京都町田市)は、人流解析プラットフォーム「asilla BIZ」において、来訪者の性別や年代を自動推定する「属性分析機能」と「カスタムレポート機能」を正式版として提供開始したと発表した。既存の防犯カメラを活用し、施設運営の意思決定をデータで支援する。
既設カメラで来訪者属性を可視化
アジラが提供する「asilla BIZ」は、防犯カメラ映像をAIで解析し、人の流れをデータとして可視化する人流解析プラットフォームである。専用センサーなどの追加機器を必要とせず、既存の監視カメラをそのまま活用できる点が特徴だ。
今回正式版として提供された属性分析機能は、来訪者の性別や年代(10歳未満〜60代以上)をAIが自動推定し、属性データとして表示するもの。通過ラインごとの来訪者属性を時系列で確認できるため、エリアごとの客層比較や施策による変化を把握できるようになる。
この機能は2025年7月にβ版として公開され、商業施設やオフィスビルなどで運用を進めながらアルゴリズムの改良が行われてきた。その結果、属性を推定できない割合(NA率)を従来比で約半減させたという。
同社によれば、「asilla BIZ」はすでに40以上の施設で導入されており、導入施設の8割以上が属性分析機能を利用している。実運用で安定したデータ取得が可能になったことから、今回正式版としての提供に至ったとしている。
あわせて、人数や属性データを日次・月次で自動集計する「カスタムレポート機能」も正式版として公開された。レポートは視認性の高い形式で出力できるほか、CSV形式でのデータ抽出にも対応し、社内報告や詳細分析に活用できる。
※行動認識AI:映像やセンサー情報をAIが解析し、人の行動や状態を理解する技術。防犯、マーケティング、人流分析など多くの分野で活用が進んでいる。
人流データ活用拡大 効率化と課題
AIによる人流解析の高度化は、施設運営の意思決定のあり方を変える可能性がある。来訪者の性別や年代、時間帯ごとの傾向を把握できれば、売り場配置や広告内容の最適化、イベント施策の効果測定などをデータに基づいて迅速に実行できるようになると考えられる。
従来、施設の来訪者分析はアンケートや手作業によるカウントに依存するケースが多かった。AIが映像から属性を自動推定する仕組みが普及すれば、現場の判断はより定量的なデータに基づくものへ変化する可能性がある。小売や不動産、公共施設など幅広い分野で導入が広がることも予想される。
一方で、映像データを利用する分析ではプライバシーへの配慮が重要になる。個人を特定しない形でのデータ処理や、利用目的の透明性を確保することが、社会的な受容性を高める上で求められるとみられる。
今後、人流データの活用は施設DX(※)を支える基盤技術の一つになるとみられる。AI解析の精度向上や機能拡張が進めば、リアル空間の運営管理はよりデータドリブンな形へと変化していく可能性がある。
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