2026年3月10日、米ブルームバーグはAI音声生成スタートアップElevenLabsが2〜3年以内の新規株式公開(IPO)に向けた準備を進めていると報じた。CEOのマティ・スタニシェフスキ氏が明らかにしたもので、欧州発AI企業として大型上場の先駆けとなる可能性がある。
ElevenLabs、3年以内のIPO準備を表明
AI音声生成技術を手がけるスタートアップElevenLabsは、2〜3年以内に新規株式公開(IPO)の準備を整える計画を進めている。CEOのマティ・スタニシェフスキ氏がポーランドで開催された会議の放送インタビューで明らかにした。
同氏によれば、上場先としてはポーランドのワルシャワ証券取引所での重複上場を検討しているという。「次のイノベーションの波を実現し、何かを創造して還元したい」と語り、同国市場への上場を視野に入れる理由を説明した。
事情に詳しい関係者によれば、上場先の候補としては米ニューヨーク証券取引所やロンドン市場も検討されているとされる。ただし協議は非公開段階にあり、具体的な計画はまだ確定していない。
ElevenLabsは生成AIを活用して自然で多様な音声を生成する技術を提供する企業である。2022年に設立された比較的新しいスタートアップだが、急速に成長している。現在は米ニューヨークに本社を置きつつ、創業の地であるポーランド・ワルシャワにもオフィスを構える。
同社は最近、セコイア・キャピタルやアンドリーセン・ホロウィッツなど世界有数のベンチャーキャピタルが主導する資金調達ラウンドで5億ドルを確保した。これにより企業価値は110億ドルと評価され、ユニコーン企業(※)としてAIスタートアップの中でも高い注目を集めている。
さらに同社の年間経常収益(ARR)は3億3000万ドルを突破したとされる。ドイツテレコム、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、金融アプリ企業レボリュート、ウクライナ政府などと提携し、企業向けサービスの導入も進んでいる。
※ユニコーン企業:未上場で企業価値が10億ドル以上と評価されるスタートアップ企業を指す。
AI音声市場拡大 期待とリスク
ElevenLabsのIPO構想は、急速に拡大するAI音声市場の成長を象徴する動きとも言える。生成AIの進化により、音声合成の品質は近年大きく向上しているとされ、動画制作やゲーム、教育、カスタマーサポートなど多くの分野で活用が広がりつつある。
企業にとっては、ナレーション制作や多言語対応を自動化できる点は大きな利点になり得る。これまで人手やスタジオ収録が必要だった音声制作をAIで代替できれば、コンテンツ制作のコストや時間を大幅に削減できる可能性がある。
一方で、音声AIの高度化は新たなリスクを伴う可能性も指摘されている。著名人や一般人の声を模倣したディープフェイク音声が作られる可能性があり、詐欺や偽情報拡散への悪用が懸念されている。各国ではAI生成コンテンツの透明性や本人同意をめぐるルール整備が議論されている段階だ。
こうした状況の中でElevenLabsが上場を実現すれば、AI音声分野への資金流入がさらに加速する可能性がある。生成AIの主戦場がテキストから音声へと広がる中、この領域の競争や規制議論は今後さらに活発化していくと考えられる。
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