2026年3月10日、埼玉県とNTT東日本など民間企業6社は、下水道管の点検から補修、情報管理までの工程を一体化する共同研究を開始すると発表した。AIとドローンを活用し、老朽インフラの維持管理を高度化する新モデルの構築を目指す。
下水道点検から補修まで工程一体化
埼玉県とNTT東日本など民間企業6社は、下水道維持管理の効率化を目的とした連携協定を締結した。点検や調査、補修、情報管理までの工程を一体化し、データと作業の流れを統合する新たな管理モデルの構築を進める。自治体と複数企業が維持管理の全工程をまとめて研究する取り組みは、県によると全国で初めてである。
対象となるのは、県内にある直径2メートル以上の大規模下水管だ。内部点検にはドローンを活用し、取得した映像をAI(※)で解析する仕組みを検討する。これにより、ひび割れや腐食などの劣化状態を自動診断する体制の確立を目指す。研究期間は2028年3月までとされ、実証結果をもとに実用的な維持管理モデルの確立を図る方針である。
今回の研究の背景には、2024年1月に埼玉県八潮市で発生した県道の陥没事故がある。原因は下水管の腐食とされ、老朽インフラの点検体制や情報共有の不足が課題として浮き彫りになった。県の第三者委員会は2026年2月に最終報告書を公表し、従来の浮遊式カメラによる点検手法の限界や、管理主体ごとに分断された情報管理の問題を指摘している。危険な作業であることから人手不足も深刻であり、技術革新による効率化が求められていた。
※AI:人工知能。大量の画像やデータを学習し、物体の特徴や異常を自動で識別する技術。インフラ点検では、ひび割れや腐食などの劣化を画像から検出する用途で活用が進んでいる。
AIインフラ点検の利点と課題
AIとドローンを組み合わせたインフラ点検は、老朽化が進む日本の社会基盤にとって大きな可能性を持つ。人が入りにくい下水管内部でも遠隔調査が可能になれば、安全性と作業効率の双方を高められる。さらに点検データを一元管理できれば、劣化状況の分析や修繕計画の高度化にもつながると考えられる。
特にAIによる画像解析は、設備の異常を早期に発見する予防保全の基盤となり得る。蓄積されたデータをもとに劣化の進行を予測できれば、事故が起きる前に補修を行う仕組みの構築も期待される。自治体の人手不足を補う技術としても注目されるだろう。
一方で課題もある。AI診断の精度確保やシステム導入コスト、自治体ごとのデジタル基盤の格差などが普及の壁になり得る。また、インフラ管理データを複数主体で共有するためには、標準化や運用ルールの整備も不可欠となる。
それでも今回の研究が成功すれば、従来分断されていたインフラ管理の工程を統合する新しいモデルとして全国に広がる可能性がある。日本の社会インフラは今後数十年で大規模更新期を迎えるとされており、AIを活用した維持管理はその中心的な手段になっていくと見られる。