南アフリカの医療AI企業AI Diagnosticsは、スペインで開催された展示会「MWC 2026」において、呼吸音から結核の可能性を検知するAI搭載ワイヤレス聴診器を公開した。
呼吸音データをAIが解析し、結核患者の音声データベースと照合することでスクリーニングを行う仕組みとなっている。
呼吸音AIで結核を検知する聴診器公開
2026年3月2日から3月5日まで開催された「MWC 2026」のスタートアップホールにて、南アフリカの新興企業AI Diagnosticsは、呼吸音を解析して結核の可能性を検知するAI搭載ワイヤレス聴診器を披露した。
専門的な医療知識がなくても使用できる設計となっており、地域社会での大規模な事前スクリーニングを想定したデバイスである。
この装置は2つのマイクを搭載しており、デジタル聴診器のように機能する。
1つは患者の体側に向け、もう1つは周囲の雑音を除去するノイズキャンセリング用として使用する。
収集された音声はペアリングされた端末へ送信され、AIが結核患者の音声データベースと照合する仕組みだ。
十分に一致すると判断された場合、正式な診断や治療を受けるよう推奨される。
この音声データセットは、10カ国における15の研究から得られた患者の録音データで構成されている。
AI Diagnosticsはこれを、「結核に関する世界最大級の音声データベース」と考えており、今後は特定の患者層ごとにデータを細分化することで、AIモデルの精度向上を進める方針だ。
さらに、肺炎や喘息、不整脈など他の呼吸器・心疾患のスクリーニングにも応用する構想を示している。
本方法による検査は、1回あたり1ドル未満のコストを目標としている。
これは、1回あたり約7ドルを要する喀痰検査(※)よりも安価であり、胸部レントゲン検査のような複雑な手法と比べて、大規模なスクリーニングを実施しやすいとされる。
同社は現在、このモニターを南アフリカのコミュニティー向けに月額リースで提供しており、同国の医療機器規制当局SAHPRAの認可を取得している。
今後はナミビア、ボツワナ、ジンバブエなどのアフリカ諸国に加え、バングラデシュやインドネシア、フィリピンなどアジア地域にも展開される予定だ。
※喀痰検査:患者の痰を採取して結核菌の有無を調べる検査。培養や分子生物学的手法により診断する標準的な方法とされる。
AI診断の拡大と医療格差への影響
このAI聴診器の最大の利点は、医療インフラが不足する地域でも結核のスクリーニング機会を広げられる点だろう。
医師や高度な検査設備が少ない地域でも初期検査を実施できるため、感染疑いの患者を早期に抽出し、治療へつなげられる可能性がある。
低コストであることも普及を後押しする要素となりそうだ。
一方で、このデバイスはあくまで優先順位付けのツールであり、結核の確定診断には従来の検査が必要となることは今後の課題となりそうだ。
また、AI解析の精度や誤検知、音声データの地域差などが診断結果に影響を与える可能性も否定できない。
医療機器として各国で認証を取得できるかどうかも、普及の鍵になるだろう。
それでも、AIによる音声解析と医療機器の融合は、感染症対策の新しいインフラを生む可能性を秘めている。
もし各国で実用化が進めば、結核の早期発見体制を大きく変える技術になるかもしれない。
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