2026年3月6日、日本のデジタル庁は政府で試験的に利用する国産の大規模言語モデル(LLM)の公募結果を公表し、応募15件の中から7モデルを選定した。今後は政府共通の生成AI環境「源内」で実証を進め、将来的な「ガバメントAI」導入を視野に評価を行う。
政府AI候補に国産LLM7モデル
デジタル庁は、政府業務で利用する国産の大規模言語モデル(LLM※)の公募結果を公表し、7つのモデルを試験対象として選定した。採択されたのは、NTTデータの「tsuzumi 2」、カスタマークラウドの「CC Gov-LLM」、KDDIとELYZAの「Llama-3.1-ELYZA-JP-70B」、ソフトバンクの「Sarashina2 mini」、NECの「cotomi v3」、富士通の「Takane 32B」、Preferred Networksの「PLaMo 2.0 Prime」である。
今回の公募は行政実務での有効性や課題を検証する目的で、2025年12月2日から2026年1月31日まで実施された。書類審査と評価テストを経て候補が絞り込まれた形となる。
選定では、国内で開発されたモデルであることに加え、行政業務に適用できる性能、安全性への対応、学習データの法令順守などが評価基準となった。さらに政府の「機密性2情報」を扱えるセキュリティー水準を確保できるかどうかも重要な要件として設定された。また、2026年度中は無償で試用できることも条件に含まれている。
今後は契約締結が完了したモデルから、政府共通の生成AI環境「源内」で試用評価が行われる予定だ。2026年5月ごろには政府での大規模実証が始まり、8月ごろからは「源内」で国内LLMの本格試用が開始される見込みである。2027年1月ごろには評価結果の一部が公表され、優れたモデルについては2027年度以降に政府が有償調達する「ガバメントAI」として採用される可能性がある。
※LLM(大規模言語モデル):大量の文章データを学習し、人間のように文章生成や要約、質問応答を行うAIモデル。生成AIの中核技術であり、チャットボットや自動文書作成など多くのAIサービスの基盤となっている。
行政AIの国産化 効率化と課題
政府が国産LLMの導入を進める背景には、行政業務の効率化に加え、政府データを国内技術で扱う体制を整える狙いもあるとみられる。生成AIが文書作成や政策調査、情報整理などを支援すれば、膨大な行政事務の負担を軽減できる可能性がある。人口減少による人手不足が進む中、AIによる業務補助は公共サービス維持の有力な手段になる可能性がある。
また、国産モデルの活用は、安全保障やデータ管理の観点からも一定の意義があると指摘されることがある。海外AIへの依存を減らし、政府データを国内技術で扱う体制を整えることは、国家レベルのデジタル基盤整備につながる取り組みとして注目されている。
一方で、生成AIの行政利用には課題も残る。AIは誤情報を生成するリスクがあり、政策判断や行政文書に影響が出れば社会的な混乱を招く恐れもある。さらに、AIの判断過程の透明性や責任の所在といったガバナンス問題も避けて通れない。
今回の実証は、日本が行政AIをどこまで実用化できるかを試す重要な段階と言える。評価結果次第では、政府業務のデジタル化が大きく前進する可能性もあり、同時に国産AI産業の成長を後押しする契機になる可能性もある。
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