2026年3月5日、AI学習コミュニティ「SHIFT AI」を運営する株式会社SHIFT AIは、大学生280人を対象に就職活動での生成AI活用実態の調査結果を公表した。企業がAI使用を禁止していても約6割の学生が利用を続ける意向を示し、採用ルールと実態の乖離が明らかになった。
AI禁止でも6割利用 就活の実態
調査によると、志望企業が生成AIの使用を禁止していた場合でも、「一部活用(49.3%)」と「フル活用(15.4%)」を合わせた64.6%の学生が利用を続けると回答した。企業側の「AI禁止」方針があっても、実際の就職活動では利用が広がっている現状が浮き彫りとなった。
一方で13.9%の学生は「その企業を受けるのをやめる」と回答している。AI利用に対する価値観の違いが、志望企業の選択に影響する可能性も示された。
AIの具体的な用途として最も多かったのは「ES・履歴書作成」で55.4%だった。次いで「文章の校正・推敲(41.1%)」「自己分析(35.7%)」と続き、生成AIが応募書類作成などアウトプット工程で広く使われていることが分かる。
また、AI活用による時間短縮も顕著で、「ES作成(65.4%)」「企業・業界研究(60.0%)」「面接対策(61.8%)」の各工程で約6割の学生が効率化を実感している。生成AIは、就活のタイムパフォーマンス(※)を高めるツールとして定着しつつある。
さらに、AIで作成した文章を提出する際に「バレる不安」を感じる学生は73.6%にのぼった。その対策として38.6%が「自分の言葉にリライトして提出している」と回答しており、AI生成文をそのまま使うのではなく、人の手で調整する運用が一般化している実態も確認された。
※タイムパフォーマンス:時間あたりの成果や効率を重視する考え方。近年は「タイパ」という略語でも使われ、就職活動や学習などで短時間で成果を出す行動様式を指す。
AI就活の利点と選考制度の課題
生成AIの普及は、就職活動の効率を高める可能性がある。企業研究や書類作成、面接準備などを短時間で整理できるため、学生はより多くの企業を比較検討しやすくなる。情報収集や文章構成を支援するツールとして、一定の合理性があるとの見方もある。
一方で、応募書類の内容がAIによって均質化するリスクも指摘されている。ESの文章構成や表現が似通えば、企業が学生の個性や思考力を評価しにくくなる可能性がある。AI活用の有無によって書類の完成度や作成時間に差が生じる点も、選考の公平性という観点で議論の対象になる可能性がある。
こうした背景から、採用現場ではES提出そのものを廃止する「ES不要論」や、面接や実務課題など対話型評価を重視する選考方法について議論が進みつつある。AI時代の採用では、文章の完成度だけでなく、思考プロセスや問題解決力を見極める選考設計が求められる可能性もある。
また、企業がAI利用を禁止する方針だけでは、実際の学生の行動との乖離が生じる可能性も指摘されている。今後はAIの使用そのものを前提に、どのように活用したかを評価する採用手法へと移行する可能性も考えられる。生成AIの普及は、就職活動のルールそのものを見直す契機になるかもしれない。
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