2026年3月5日、国際労働機関(ILO)は生成AIの普及が労働市場の男女格差を拡大させる可能性があるとする報告書を公表した。女性比率の高い事務職はAIによる自動化の影響を受けやすく、男性中心の職種よりも大きな変化が生じる恐れがあると指摘している。
女性職種でAI影響29% ILO報告
ILOが発表した報告書は、生成AI(※)の急速な発展が職種ごとに異なる影響をもたらす可能性を分析したものだ。特に女性が多く従事する秘書や受付などの事務系職種では、業務の一部がAIによって自動化されやすいとされる。
分析では、女性中心の職種のうち約29%がAIの影響を受ける可能性があると推計された。一方、建設関連など男性比率の高い職種では16%にとどまり、職種構造によって影響の大きさが大きく異なることが示された。事務処理や情報整理など、デジタル化された定型業務が多いほどAIによる代替が進みやすいためである。
報告書はまた、AI産業そのものにおける女性比率の低さにも触れている。AI関連分野で働く女性は全体の約30%にとどまり、技術開発の中心に女性の視点が十分に反映されていない可能性があるという。
さらに、国の所得水準による影響の差も分析された。高所得国ではサービス業や事務職の割合が高いため、雇用の41%がAIの影響を受ける可能性がある。一方、低所得国では11%にとどまると推計されており、経済構造によってAIのインパクトが変わることも示された。
※生成AI:大量のデータを学習し、文章や画像、音声などのコンテンツを自動生成する人工知能技術。文書作成やデータ整理などの定型業務を自動化できるため、事務職を中心に労働市場への影響が議論されている。
AIが雇用を変える 格差拡大か是正か
生成AIの普及は、労働市場に大きな変化をもたらす可能性がある。定型業務の自動化が進めば、企業の事務作業の効率化が進む可能性がある。人間は分析や意思決定、創造的業務へと役割を移しやすくなり、生産性向上につながる可能性もある。
一方で、スキル転換が進まなければ雇用格差が広がるリスクもある。特に事務職などAIの影響を受けやすい分野では、再教育やデジタルスキル習得の機会が不足すれば、労働市場から取り残される人が増える恐れがある。
また、AI開発分野における女性比率の低さが続けば、技術設計の段階でジェンダー視点が十分に反映されない可能性も指摘されている。アルゴリズムや学習データが偏れば、社会の既存の格差を再生産する結果につながる可能性もある。
AI時代の雇用構造は依然として変化の途上にある。今後は企業によるリスキリング投資や教育制度の整備、技術開発の多様性確保などが重要になると考えられる。AIの普及が格差拡大の要因になるのか、それとも働き方を改善する契機になるのかは、政策と人材戦略の設計に左右されると言える。
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