2026年3月4日、日本の最高裁判所第二小法廷が、AIを発明者とする特許出願を巡る訴訟で出願者側の上告を退けたと、2026年3月5日に朝日新聞社が報じた。
これにより「発明者は自然人に限る」とした一、二審判決が確定した。
AI発明者を巡る訴訟の経緯
今回の訴訟は、人工知能「ダバス」を発明者として記載した特許出願を巡るものだ。
2020年、米国籍の出願者が食品容器などの技術について日本の特許庁に出願する際、発明者欄に「ダバス、本発明を自律的に発明した人工知能」と記載した。
しかし特許庁は2021年、「発明者は自然人(※)に限られる」として補正を求めた。
出願者がこれに応じなかったため、同庁は出願を却下している。
その後提起された訴訟では、一審の東京地裁が「特許法は発明者が人であることを前提とし、人以外に特許を与える規定もない」と指摘した。
二審の知的財産高裁も同様の結論を示し、AIによる発明の扱いについては社会的影響を踏まえた慎重な議論が必要としながらも、一審の結論を支持した。
そして最高裁第二小法廷が今回、上告理由となる憲法違反などは認められないとして上告を退けたため、一、二審判決が確定した。
この判断により、日本の司法は「発明者は自然人」という原則を改めて確認した形になる。
※自然人:法人などの組織ではなく、権利主体となる個人の人間を指す法律用語。多くの国の特許制度では、発明者は自然人に限られると解釈されている。
AI発明の制度設計 技術革新と法制度のギャップ
今回の判決は、現行の特許制度が人間の創造活動を前提としていることを改めて明確にした点で意義があると言える。
AIを活用した研究成果であっても、現行法における特許出願では発明者を人間として整理する必要があると考えられる。
こうした運用は従来の出願実務と大きく変わらないため、企業や研究機関の権利帰属の実務は当面安定するとみられる。
一方で、AIの自律的な創作能力が急速に高まる中、制度とのギャップが広がる可能性も否定できない。
将来的にAIが人間の介在をほとんど必要とせず技術を生み出すようになれば、誰を発明者とするのかという問題はさらに複雑化すると考えられる。
海外でも同様の議論は続いており、発明者にAIを含めることには慎重な国が多い。
ただし、今後のAI発明の扱いを巡る政策議論によって、新たな知財制度が制定される余地は残されているはずだ。
AIを「発明者」として認めるのか、それとも人間の補助的ツールとして扱うのかという制度設計については、今後も重要な論点となるだろう。
技術革新のスピードに法制度がどのように追いついていくのか、今後も注目したい。
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