2026年3月5日、神奈川県松田町が実証実験として運行してきたAIオンデマンドバス「のるーと足柄」が今月末で終了することが明らかになった。累積赤字は約9300万円に達し、町は赤字補填を行わない方針を示した。地方の新たな交通モデルとして期待されたAIモビリティの難しさが浮き彫りとなっている。
利用伸びずAIオンデマンドバス終了
神奈川県松田町が導入したAIオンデマンドバス「のるーと足柄」は、利用者の伸び悩みにより今月末で運行を終了する。町によると累積赤字は約9300万円に達しており、そのうち約6000万円を車両運行を担った地元のバス会社やタクシー会社が負担する見通しとなっている。
同サービスは2023年10月、路線バス網の縮小が進む中で高齢者などの移動手段を確保する目的で実証実験として始まった。ワゴン車を用いた乗り合い型の交通で、利用者がスマートフォンなどから乗降場所を予約すると、AIが最適な運行ルートを算出して配車する仕組みである。路線バスとタクシーの中間的な交通手段として位置付けられていた。
事業は一般社団法人「足柄オンデマンド」が運営主体となり、町から業務委託を受ける形で進められた。法人はAIシステム提供企業と契約し、町内のバス会社やタクシー会社に運行を委託する体制を構築。町の委託費と運賃収入を基盤に3年間の実証を行い、その後本格運行へ移行する計画だった。
しかし運行開始当初から利用は低迷した。町によれば利用者数は当初想定の約2割にとどまり、料金改定や運行エリアの見直しなどを行ったものの状況は改善しなかった。町はこれまでに約1億500万円を委託費として支出している一方、運営法人は2023年度に約2900万円、2024年度に約3500万円の赤字を計上し、今年度も約2900万円の赤字が見込まれている。
AI地域交通の可能性と課題
一方で、今回の事例は、技術導入だけでは地域交通の課題を解決するのが難しい可能性を示している。地方では高齢者の利用が中心になる場合が多く、スマートフォン予約を前提とした仕組みが利用のハードルになることもある。また、既存のバスやタクシーと役割が重なることで、地域の交通事業者との調整が難しくなる可能性も指摘される。
さらに、公共交通としての側面を持ちながら、収支責任をどこが負うのかという制度設計も課題だ。今回、松田町は赤字補填を行わない方針を示したが、自治体主導の事業では民間だけがリスクを負う構造は持続しにくいとの指摘もある。
AIモビリティの実証は、各地の自治体でも試みられている。今後は技術そのものよりも、料金設計、既存交通との役割分担、自治体と民間の責任分担といった制度面の設計が、持続可能な地域交通モデルを左右する要素になると言えそうだ。
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