2026年2月20日、日本の防衛省は国会答弁資料の作成を支援する「国会答弁作成AIアシスタント」の試験運用を開始したと発表した。
国会答弁作成AIを試験運用開始
同システムは、防衛省内のネットワーク上に構築された生成AIが、過去の答弁資料や関連文書を参照し、答弁案の素案を自動生成する仕組みである。職員が国会質問の内容を入力すると、AIが類似する答弁や法令、背景資料を横断検索し、論点を整理したたたき台を提示する。
最終的な答弁資料は担当職員が精査・修正を行ったうえで確定する。あくまで補助的な役割にとどめ、人による確認を前提とした運用だ。国会答弁は過去発言との整合性確保や法令解釈の確認など多岐にわたる作業を伴い、準備負担が大きい業務とされてきた。
小泉進次郎防衛大臣は自身のXで、AIチームから実機を用いた説明を受けたと明らかにした。「一度使ったらもう今までの答弁作成には戻れない」との職員の声を紹介し、現場での有用性に期待を示した。省内のデジタル活用を後押しする姿勢も打ち出している。
※生成AI:大量のデータを学習し、文章や画像などのコンテンツを自動生成する人工知能技術。近年は行政や企業の業務支援分野で導入が進む。
※行政DX:デジタル技術を活用して行政手続きや業務プロセスを変革し、効率化や高度化を図る取り組み。政府全体で推進が進められている。
効率化の利点と統制リスク
今回の取り組みは、防衛分野における行政DX(※)の加速を象徴する動きと位置づけられる。答弁作成の時間短縮が実現すれば、職員は政策立案や分析といった本来業務により多くのリソースを振り向けられる可能性がある。人材確保が課題とされる官庁組織にとって、生産性向上につながる効果が期待される。
一方で、生成AIの活用には構造的なリスクが生じる可能性もある。過去答弁の誤記や不適切表現を踏襲する恐れに加え、文脈理解の不十分さによる誤生成が発生する余地も否定できない。特に防衛分野では情報管理の厳格さが一層求められると考えられ、アクセス制御やログ管理の徹底が重要な論点になる。
今後、試験運用の成果が確認されれば、他省庁への横展開が検討される可能性もある。国会対応という政治的影響の大きい領域にAIが関与することで、行政の説明責任や意思決定過程の透明性をどのように担保するかという議論が広がることも想定される。効率化と統制の両立は、日本の公共分野における生成AI活用を進めるうえで重要な焦点となりそうだ。
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