2026年2月24日、株式会社ローソンとKDDI株式会社は、災害時に地域支援拠点となる「災害支援ローソン」1号店を千葉県富津市に開設した。平時は通常営業を行い、有事には通信・電力・水・食料を確保する新モデルである。
富津湊店が災害支援拠点に刷新
両社は2030年度までに全国に100店舗の「災害支援ローソン」設置を目標に掲げている。
今回、その第1号として「ローソン富津湊店」がリニューアルオープンした。
店舗面積は160.86㎡、24時間営業を維持しながら、災害時には地域住民を支える機能を発揮する設計となっている。
背景には、政府の地震調査委員会が公表した南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率が「60〜90%程度以上」とされる指標がある。
さらに直近10年間の短時間強雨の発生回数が約1.5倍に増加するなど、気候変動に伴う災害リスクの高まりも無視できない状況だ。
同店は災害時、主に「災害情報の受発信」「水・食料の供給」「通信・電力の確保」の三領域を担う。
店内のデジタルサイネージで災害情報を発信し、従業員向け端末にも緊急通知を送信する。自治体と連携したドローン活用も検討中である。
物資面では1,500L超の飲料水をローリングストックし、配送が途絶した場合でも店内厨房で災害時専用おにぎりを製造する。敷地内の井戸から手動ポンプで生活用水を供給する体制も整えられている。
通信・電力では、衛星通信サービス「Starlink(※1)」を活用したフリーWi-Fiを開放し、小型基地局「auフェムトセル(※2)」を設置する。
停電時は太陽光パネルと蓄電池、電動車からの給電により店舗運営と通信維持を図る。KDDIの通信復旧チームの活動拠点としても活用される計画だ。
※1 Starlink:米SpaceXが提供する低軌道衛星インターネット通信サービス。地上回線が途絶しても通信を確保できる。
※2 auフェムトセル:小規模エリア向けの携帯電話基地局。通常回線が不通時でも限定的な音声・データ通信を可能にする装置。
分散型インフラの可能性と課題
本取り組みの最大の意義は、コンビニを分散型インフラへと拡張する点だろう。
流通網と通信網を一体化させることで、中央集約型システムが停止しても最低限の生活基盤を維持できる可能性がある。地域単位でのレジリエンス強化に直結するモデルと言える。
住民にとっても、情報取得や端末充電、水・食料の確保が同一拠点で完結できる利便性は大きいだろう。
また、通信復旧活動の拠点化は、災害後の復旧スピードを高める効果も期待できそうだ。
一方で、設備投資や維持コストは相応に発生するはずだ。衛星通信や蓄電設備の運用負担、訓練の継続、採算性との両立は課題となり得る。
また、民間店舗が公共インフラ機能を担うことへの制度的整理も求められそうだ。
それでも、全国100店舗構想が実現すれば、コンビニ網は準公共インフラとして再定義される可能性がある。
小売業の枠を超えた社会的役割の拡張が、今後の競争力を左右するかもしれない。
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