KDDIなど4社は商用ネットワーク上で耐量子セキュリティを用いた大容量伝送の実証成功を発表した。耐量子セキュリティ通信としては国内初となる57.6Tbpsの高速通信を達成し、AIデータセンター間接続など高セキュリティ用途への商用化を目指す国内の取り組みである。
商用網で耐量子×57.6Tbps実証
2026年2月18日、KDDI、KDDI総合研究所、ノキアソリューションズ&ネットワークス、東芝デジタルソリューションズの4社は、大阪堺データセンターと市内ネットワークセンター間の商用回線で実証を実施した。
量子鍵配送(QKD)(※1)と耐量子暗号(PQC)(※2)を組み合わせ、57.6Tbpsの大容量データを遅延増加なく伝送することに成功している。
本構成では、AESと高速暗号Rocca-Sを用い、物理層とアプリケーション層の複数レイヤで多層暗号化を実施した。
C帯・L帯を活用した光通信により長距離・大容量伝送を実現し、量子計算機時代を見据えた実運用レベルの性能を確認した形になる。
背景には、AI普及による通信量の急増と、分散配置が進むAIデータセンター間の高速接続ニーズがある。
さらに、将来の量子コンピューターによる既存暗号の危殆化リスクへの対応も通信インフラにおける重要課題となっており、耐量子セキュリティ通信量を両立したアプローチが必要となっている。
※1 QKD:量子の性質を利用し、盗聴を検知可能な形で暗号鍵を共有する技術。
※2 PQC:量子コンピューターでも解読困難とされる数学問題を基盤とした次世代暗号方式。
AI時代の基盤競争と実装課題
今回の成果は、AIインフラのボトルネックとなる「帯域」と「セキュリティ」を同時に強化する技術的な方向性を示すものだとみられる。
金融・医療など機密性の高い専用線や、AIデータセンター間のバックボーン用途での商用展開が期待され、用途に応じてセキュリティレベルを選択できるサービス化も検討されている。
一方で、QKDは専用装置や光環境への依存が大きく、導入コストや運用複雑性が普及の制約となる可能性がある。
量子計算機の実用化時期は不透明だが、「今収集して後で解読する」攻撃への備えは、徐々に進み始めているとも考えられる。
通信事業者にとって耐量子対応は差別化要素となり、AI・クラウド基盤の安全性を巡るインフラ競争は一段と高度化していく可能性がある。
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