2026年2月16日、楽天モバイルは、JAXAの宇宙戦略基金事業において衛星通信と地上ネットワークの統合運用に関する技術開発提案が採択されたと発表した。
AIを活用した周波数共用技術の開発により、次世代の通信インフラ高度化を目指す国内の研究開発である。
AIで衛星と地上網を統合運用
この研究は、低軌道衛星と地上ネットワークが同一周波数帯を利用する環境において、AIによる動的制御で干渉を回避し、最適な通信状態を維持する技術の確立を目的とする。
東京大学大学院工学系研究科中尾研究室が連携機関として参画し、2026年3月から2031年3月末までの実施が予定されている。支援額は最大110億円にのぼる。
低軌道衛星と市販スマートフォンを直接接続する衛星ダイレクト通信では、利用状況に応じた周波数管理が不可欠となる。特に、ドップラーシフト(※)や伝搬遅延の影響により、音声・映像通信の品質維持には高度な補正が求められる。
今回開発される「次世代衛星通信AI」は、基地局のカバレッジ情報などをもとに、地上ネットワークと通信衛星を統合的に監視、制御することを目的としている。
楽天モバイルと東京大学は、これまで低軌道衛星を活用したIoTカバレッジ拡張の共同研究などを進めており、その成果を基盤としてネットワーク統合運用の実証を進める計画だ。
※ドップラーシフト:通信対象が移動することで送受信間の相対速度が変化し、電波の周波数がずれる現象。衛星通信では品質低下の要因となる。
通信の常時接続化が加速する可能性
本技術が実用化されれば、ユーザーが都市部から山間部、海上へ移動しても通信が途切れにくい環境が実現する可能性がある。
災害時のバックアップ通信としての活用に加え、自動運転車両、ドローン、空飛ぶ車など、常時接続を前提とする次世代モビリティへの波及も期待される。
一方で、衛星と地上網の統合は運用の複雑化を伴い、AI制御の信頼性やセキュリティ確保が重要な課題となる。周波数共用は電波資源の効率化につながる反面、誤制御による干渉リスクも無視できない。
また、長期のステージゲート評価を前提とした基金事業であるため、成果は段階的に検証される見通しだ。
通信インフラの高度化は、宇宙産業とモバイル産業の融合を加速させる分野である。AIによるネットワーク自律運用が実証されれば、日本発の通信技術がグローバル市場での競争力を高める契機となる可能性もある。
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