2026年1月21日、米ハーバード大学医学部とマサチューセッツ総合病院の研究チームは、AIを個人的な相談相手として頻繁に利用する人ほど、うつや不安症状が強い傾向にあるとの大規模調査結果を公表した。対象は米国在住の成人2万人超である。
AI個人利用と抑うつ傾向に統計的関連
公表された研究では、米50州に住む18歳以上の男女20,847人を対象に横断調査が行われた。
参加者はAIの利用頻度(未使用〜1日複数回)や用途(仕事・学業・個人利用)を回答し、同時にうつ症状や不安、易怒性を測定する心理尺度(※)にも答えた。
全体の約10%が「毎日AIを利用している」と回答し、そのうち87.1%が個人的な目的で使用していた。
分析の結果、うつや不安との有意な関連が確認されたのは「個人的利用」に限られ、「仕事」や「学業」での使用では明確な相関は示されなかった。
研究を率いた精神科医ロイ・パーリス博士によれば、毎日AIを利用する人は非利用者と比べ、中等度以上のうつ症状を示す確率が約30%高かったという。
また、不安やイライラについても同様で、AIの使用頻度が高いほど症状が強まる傾向にあることが示された。
ただし本研究は「AIがうつを引き起こす」ことを断定するものではなく、「もともと抑うつ傾向の強い人がAIを相談相手として選びやすい」可能性も排除していない。
※心理尺度:抑うつや不安の程度を数値化するための標準化質問票。臨床研究や疫学調査で広く用いられる評価手法。
利便性の光と依存リスク、今後の設計課題
AIは基本的に24時間応答可能であり、否定や感情的反応を伴わず助言を提示できる。その即時性と匿名性は、対人相談に心理的ハードルを感じる層にとって大きな安心材料となっているのかもしれない。
特に多忙なビジネス層などにとっては、時間や費用の制約を超える補助的手段として機能し得る存在だろう。
一方で、問いかければ瞬時に整理された回答が返ってくる環境は、自ら試行錯誤しながら感情を言語化する機会を減少させる可能性がある。
人間同士の対話では、沈黙や戸惑い、相手の反応を読み取る過程そのものが内省を促す場面もあるが、AIとのやり取りではその摩擦が希薄になりやすいとも考えられる。
結果として、現実の人間関係から距離を取る行動が強化されてしまうかもしれない。
今後は、AIを人間関係の代替ではなく補完と位置づける設計思想が鍵となりそうだ。
利用頻度が過度に高まった場合のアラート機能や、一定水準以上の抑うつスコアが検出された際に専門機関へ接続する導線の整備が進めば、リスクを抑えつつ利便性を活かすモデルが構築される可能性がある。
AI時代のメンタルヘルス管理は、技術革新と人間的接点の再定義が同時に求められるものとなるだろう。
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