2026年2月5日、株式会社ワークスアプリケーションズ(WAP)は、日本国内で提供する大手企業向けクラウドERP「HUE AC」に生成AIを活用した「AI申請書レビュー」機能を実装したと発表した。判断根拠を明示し、監査に耐える運用を可能にする点が特徴である。
HUE、AI申請書レビューを提供開始
本機能は経費精算や請求書払いなどの申請内容と添付資料をAIが読み取り、社内規程に基づきスコアリングする仕組みが取られている。単なる誤字脱字の検出ではなく「どの規程に照らして確認が必要か」という根拠を併せて提示する設計がされている。
例として、目的が「プロジェクト進行会議」であるにもかかわらず、夜間に居酒屋での支出が計上されている場合、内容の矛盾として低スコアを付与し、福利厚生費や交際費への振替検討を提案する。理由欄が「打ち合わせ」など抽象的な記述にとどまる場合は、具体的な訪問先や目的の明示を促す改善案を示す。助詞や接続詞の誤りといったケアレスミスも検出対象だ。
従来、申請の定性的チェックは人の経験と勘に依存してきた。AI活用の動きはあったものの判断過程がブラックボックス化し、監査証跡(※)を十分に残せないことが大手企業での実装を阻んできた経緯がある。今回の機能はAIの判断根拠を記録として保存できる点で、実運用を前提とした設計に踏み込んでいる。
※監査証跡:業務や取引の過程を後から検証できるように残す記録。内部統制や外部監査において重要視される。
効率化と統制強化の両立は可能か
AIによる根拠付きレビューは、経理部門の業務負荷を軽減し承認者が本来注力すべき判断ポイントに集中できる環境を整える可能性がある。スコアリングにより確認の優先順位が明確化されれば、処理スピードと一貫性の向上も期待できる。
一方で、規程の解釈やグレーゾーンの判断までをAIがどこまで担えるかは慎重に見極める必要がある。スコアが低い案件の扱いやAI提案を過度に信頼するリスクも想定される。最終責任はあくまで人が負う構造を維持できるかが重要となるだろう。
WAPは2026年7月に「AI承認者機能」を追加する予定だ。リスクの低い申請をAIが承認し社員が例外案件に集中する体制が現実化すれば、ERP(※)は単なる記録システムから判断支援基盤へと進化する。監査水準を維持しながら自動化を進めることが、日本企業のDX成熟度を測る試金石となるだろう。
※ERP:企業の会計・人事・購買など基幹業務を統合管理するシステムの総称。近年はクラウド型が主流となっている。
関連書類:
ワークスアプリケーションズ、AIでERPを進化 クラウド基盤「HUE」に新機能

